石油精製大手のIRPC(アイアールピーシー)は、中東情勢に起因する原油供給逼迫が続く中でも、フル稼働で生産を続けており、燃料の供給に支障はないと声明を発表した。ただし需要が生産能力を上回っているため、ガソリンスタンドへの配分は優先順位をつけた割り当て制で対応している。
IRPCはタイ国内6カ所の石油精製所のうちの一つで、PTTグループ傘下の国営企業だ。主にディーゼルと石油化学製品を生産しており、タイ全体の精製能力175万リットル/日の一端を担う。声明によると、同社は「生産資源と原材料の最大活用」を続けており、需要超過の状況下では重要度の高い顧客から優先的に割り当てる体制を取っているという。
優先順位の第1位は、法定燃料販売事業者(มาตรา 7)に指定されたガソリンスタンドだ。ここへの供給を確保することで、一般消費者が燃料にアクセスできる最低限の流通網を維持することが最優先とされる。第2位は工業向けの直接ユーザーで、経済活動の継続を支援する。第3位はジョバー(Jobber)と呼ばれる中間卸業者で、地方の中小スタンドへの供給を担う。この3段階の優先順位は、燃料が生活インフラである以上、公平性と効率性のバランスを取る上で必要な措置だ。
声明の中でIRPCは「現在、燃料への需要は当社の生産能力を上回っている。このため、一定期間において優先配分が必要な状況にある」と認めた。これは事実上、一部の地域や特定のスタンドが希望する量の燃料を受け取れていない状況を示唆している。農村部では入荷が数日単位で遅れるケースも報告された。
タイ政府は2026年3月、燃料輸送車全台へのGPS追跡システムの導入を決定した。これは精製所を出た燃料が目的地以外に横流しされる不正を防ぐための措置だ。IRPCはこの政府方針への全面協力を表明している。実際に一部の地域で「燃料の横流し」が確認されており、GPS監視が抑止力になることが期待されている。
タイの石油精製業界全体では、原油調達を中東以外の多様なルートに切り替える取り組みも進んでいる。ロシア産原油や東南アジア域内からの調達拡大が検討されているが、タイの既存精製設備が処理できる原油の種類に制限がある点が課題だ。代替供給源の確保と設備改造のコスト増加は、製品価格の上昇圧力になる可能性がある。燃料危機が短期で解消するかどうかは、中東情勢の展開に大きく左右される。
タイのGDPに占める消費の割合は約55%で、エネルギー価格の上昇は個人消費の冷え込みを通じて経済全体に波及する。特に低所得層の実質購買力低下は深刻で、政府の生活支援策の拡充が求められている。
タイバーツは2026年に入り中東情勢の影響で対ドルで軟調に推移し、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力が高まった。タイ中央銀行は金利政策と為替介入を慎重にバランスさせながら対応している。
在タイ日本人や日本からの訪問者にとっても、今回のような出来事はタイの社会・文化の一側面を理解するうえで参考になる。タイと日本の間には歴史的・経済的な深い結びつきがあり、在タイ日系企業のビジネス活動や日本人観光客への影響も無視できない。今後も継続的な情報収集と現地状況の把握が重要だ。
タイは人口約7,000万人を擁する大国で、バンコクを中心に経済・文化・政治が集中している。2026年現在、首相アヌティン・チャーンウィーラクーン率いる連立政権は、中東情勢の影響で高まるエネルギーコストと生活費上昇への対応を最優先課題としている。在タイ日本人・日本企業にとっても、タイの政策動向や社会情勢を把握し、適切に対応することが求められる局面だ。