タイ東北部コーンケン県で、59歳の男が、一緒に酒を飲んでいた友人を「ピーポップ(人を食う精霊)」だと思い込み、ハンマーで殴り殺したとして逮捕された。被害者は頭などを20回ほど殴られ、搬送先の病院で死亡した。タイの民間信仰に根強く残る精霊への恐れが、痛ましい事件を引き起こした形だ。
朝から酒を飲み、口論の末に
警察によると、逮捕されたのはウィチャン容疑者(59)。6月24日、コーンケン県ナムポーン郡クットナムサイ地区にある自身の畑の小屋で、朝から友人のバンジョンさん(57)と地酒を飲んでいた。やがて口論となり、ウィチャン容疑者はハンマーを持ち出して、バンジョンさんの頭や体を20回ほど殴打したという。バンジョンさんは重傷を負い、ナムポーン病院で死亡が確認された。
通報を受けた警察は、6月24日午後5時ごろ現場に駆けつけ、午後7時ごろ、抵抗しなかったウィチャン容疑者の身柄を確保した。凶器のハンマーは証拠として押収され、容疑者は傷害致死の疑いで取り調べを受けている。
「ピーポップ」とは何か
ウィチャン容疑者は、バンジョンさんを「ピーポップ」だと言って襲ったとされる。ピーポップは、タイ東北部(イサーン)の民間信仰に伝わる、人の内臓を食べるとされる精霊だ。誰かがピーポップに憑かれているとうわさされると、その人や家族が村社会で差別や排除の対象になることもある。
タイでは近年も、ピーポップにまつわるトラブルがたびたび報じられている。先月にはムックダーハーン県で、ピーポップ疑いをかけられた高齢女性が村を追われそうになる騒ぎも起きた。今回は、酒に酔った状態での思い込みが、命を奪う事件にまで発展した。
信仰と現実のはざまで
近代化が進むタイでも、地方では精霊や呪術への信仰が今なお生活に溶け込んでいる。多くは祭礼や占いといった穏やかな形だが、今回のように、思い込みや恐怖が暴力に結びつく不幸なケースも起こりうる。警察は今後、事件当時の状況や動機をさらに詳しく調べるとみられる。


