タイ西部ターク県で、中国人の男3人が住民の車や警察のパトカーを壊し、バイクを盗んで逃げようとしたとして逮捕された。男たちは取り調べに対し、「だまされてタイに連れてこられ、ミャンマー側に送られた後、そこから逃げ出そうとしていた」と供述しているという。ミャンマー国境に近いこの地域では、詐欺グループにだまされて連れ込まれた外国人が、命がけで脱出を図る例が相次いでいる。
車を壊し、逃げようとした3人
逮捕されたのは、ヤン・ルダ容疑者(28)、フェン・ジェンダオ容疑者(31)、フパン容疑者(32)の3人。事件が起きたのは6月4日午前10時半ごろ、ポップラー郡ルアムタイパッタナ区の道路上だった。
3人は、住民の車を壊したうえ、駆けつけた警察のパトカーのフロントガラスも割り、さらに住民のバイクを奪って逃げようとしたとされる。少なくとも2台の車が被害を受けたが、けが人はいなかった。地元住民からは、この一帯で同じグループが通行人をふさいで金品を奪ったり、バイクを取り上げたりしていたという通報も、事前に寄せられていた。
「ミャンマーから逃げてきた」
注目されるのは、男たちの供述だ。3人は当初、「タイに行く話を持ちかけられてだまされ、ミャンマー側のある場所に送られた。そこから逃げようとしていた」という趣旨の説明をしたとされる。ポップラー郡は、ミャンマー側の街ミャワディと国境を接する地域だ。
ミャワディの周辺には、外国人をだまして連れ込み、オンライン詐欺の仕事を強いる「詐欺団地」が点在することで知られる。中国人をはじめ、多くの外国人が高収入の仕事をうたう求人にだまされて連れ込まれ、事実上の監禁状態に置かれて暴力を受けることもあるとされる。タイ政府は国境地帯への電力や燃料の供給を断つなどの対策を進めてきたが、問題の根は深い。命の危険を冒して国境を越え、タイ側へ逃げ込もうとする人が後を絶たず、今回の3人も、そうした境遇にあった可能性がある。
加害者であり被害者でもある
ただし、たとえ逃走のためであっても、他人の車を壊し、金品を奪う行為は犯罪だ。警察は3人について、器物損壊や窃盗、強盗、公務執行妨害などの容疑で立件する方向で調べている。
一方で、もし彼らが詐欺団地の被害者だったとすれば、加害者であると同時に、人身売買の被害者でもあるという複雑な立場に置かれることになる。タイとミャンマーの国境地帯で続く詐欺と人身売買の問題が、こうした形で表面化した事件ともいえる。