タイの観光地パタヤの近郊で、覚醒剤を売っていた女が、幼い息子を使って客に薬物を配達させていたとして摘発された。息子は注意欠如・多動症(ADHD)を抱えており、自宅の門のところで、買い手に覚醒剤を手渡し、代金を受け取らされていたという。子どもを犯罪の道具にした手口に、地域から強い非難の声が上がっている。
門前で息子に覚醒剤を手渡させていた
摘発されたのは、チョンブリ県バングラムンに住む「ジェー・クン」ことソムラックという女である。当局によると、女は自宅で覚醒剤を売りさばき、その配達役に自分の幼い息子を使っていた。息子は、門のところで客に薬物の袋を渡し、お金を受け取る役目をさせられていたとされる。
近隣の住民は、この家に頻繁に人が出入りし、とりわけ10代の若者が集まること、門のところで薬物の受け渡しが繰り返されていることに気づき、不安を募らせていた。住民の通報がきっかけとなり、摘発につながった。
住民の通報で摘発、押収品は覚醒剤9グラム
6月2日の午後5時半ごろ、バングラムン郡の治安担当の職員が住宅を捜索した。押収されたのは、14袋に小分けされた結晶状の覚醒剤8.9グラムと、覚醒剤の錠剤18錠、それに電子はかりや空の袋などだった。販売用に小分けしていたとみられる。
摘発の際には、覚醒剤0.8グラムを買おうとしていた女2人も、その場で捕まった。女らはそろってパタヤ市警察に引き渡され、法的な手続きが進められている。地域の住民が行政の窓口に声を上げたことが、今回の摘発につながった。身近な異変を見過ごさない目が、こうした犯罪を止める力になる。
薬物に巻き込まれる子どもたち
タイは長年、覚醒剤の流入と乱用に悩まされてきた。隣国とつながる山岳地帯のルートを通じて、安価な錠剤型の覚醒剤が大量に持ち込まれ、末端では一錠数十バーツほどで手に入るとされる。手を出しやすいぶん、依存が家庭を壊し、その影が子どもにまで及ぶことも少なくない。
今回の事件で胸が痛むのは、まだ幼い、しかも障害を抱えた子どもが、犯罪に巻き込まれていたことである。子どもは本来、守られるべき存在だ。それが、親の手によって薬物の受け渡しをさせられていたとなれば、罪は重い。子どもがその後どう保護されたのかは明らかにされていないが、心と体のケアが何よりも必要だろう。摘発は地域の不安を取り除く一歩であると同時に、子どもをどう守るかという重い課題も突きつけている。