タイとカンボジアの国境で、再び緊張が高まっている。タイ軍は6月1日朝、ウボンラチャタニ県のチョンボック付近で約50人の部隊を出し、約150メートルにわたって有刺鉄線を敷設した。これに対しカンボジア側が現地で抗議の意を示したという。タイ側は、自国が管理する地域での自衛と治安維持のための措置だと説明している。
6月1日朝、745高地付近での動き
タイ軍のスラナリ部隊によると、1日午前7時5分ごろ、タイ側が約50人の部隊を投入し、745高地の南西側、チョンボックに近い地点で長さ約150メートルの有刺鉄線を敷いた。カンボジア側はこれを問題視し、現地で中止を求める姿勢を見せたとされる。タイ側は、この行動が自衛と、自国の管理地域における治安強化を目的としたものであり、担当区域の警備という任務に沿ったものだと強調している。チョンボックはタイ・カンボジア・ラオスの三国国境に近い一帯にあり、以前から境界が不明確な区域として知られてきた。
続く国境の緊張と昨年末の停戦
タイとカンボジアの国境では、2025年に数週間にわたって激しい衝突が起き、双方に死傷者が出る事態となった。年末に停戦の合意が結ばれて戦闘はいったん止まったものの、その後も双方が相手の「挑発」を非難し合う状況が続いている。タイ軍はこれまでにも、係争地で有刺鉄線やコンテナを用いて陣地を固めてきた。カンボジア側は、こうした措置によって自宅に戻れない住民が数千世帯にのぼると訴えている。3月にはタイ側が警告射撃を行う場面もあり、5月末にも有刺鉄線の境界線付近でカンボジア兵が動画を撮影するなどの動きが確認されたと伝えられた。
画定しない境界という火種
こうした対立の根っこには、両国の境界線が一部で画定していないという問題がある。地図の解釈や歴史的な経緯をめぐって主張が食い違い、現場では小さなにらみ合いがたびたび起きる。境界画定を話し合う合同委員会の動きは停滞しており、その間に一方が現状を固定化させるのではという警戒もある。両国とも国内向けには強い姿勢を見せる必要があり、譲歩が難しいことも事態を長引かせている。タイ軍は現時点で大規模な衝突の兆候はないとの見方を示すが、国境地帯では引き続き神経質な状況が続きそうだ。
閉鎖が続く陸路の国境ポイント
国境の緊張は、人やモノの行き来にも影響している。タイとカンボジアを結ぶ陸路の検問所の多くは、対立の高まりを受けて閉鎖や制限が続いており、国境貿易や観光に影を落としている。軍の動きだけでなく、検問所の開閉をめぐる情報も飛び交い、各県は誤った情報の打ち消しに追われている。アランヤプラテートなど、これまで多くの旅行者が利用してきた国境ポイントの状況も、当面は注意しておきたい。陸路でカンボジアへ抜ける予定がある場合は、出発前に検問所が通常どおり機能しているかを確かめておくと安心だ。