飲酒運転で配達ライダーをはねて死亡させたとして訴追された国家汚職防止取締委員会(NACC)の捜査特別事案局長をめぐり、元法務省次官がSNSで解任と年金受給権の剥奪を公然と求めた。捜査が続くさなかに同局長が手当の大幅増を伴うポストへ異動していたとの報道も重なり、汚職を取り締まる立場の幹部への批判が一段と強まっている。
元法務次官が突きつけた解任要求
タワットチャイ・タイケオ元法務省次官は5月31日、自身のSNSに投稿し、問題の局長を懲戒免職とし、退職後の年金受給権も剥奪すべきだと主張した。NACCは汚職や公務員の不正を取り締まる独立機関であり、その捜査部門を率いる幹部が自ら重大な犯罪の当事者になった以上、通常以上に厳しい処分が必要だという趣旨である。法務行政の中枢にいた人物が実名で処分を迫ったことで、この問題は一個人の事件から、取り締まる側の機関の信頼性そのものを問う議論へと広がった。
捜査中の「異動」報道が呼んだ反発
批判をさらに強めたのが、捜査が続く最中に局長が手当の大幅増を伴うポストへ移り、事実上の昇進ではないかと受け止められたことである。月額の手当は8,000バーツ(約3万9,000円)から40,000バーツ(約19万4,000円)へと上がったと報じられた。処分どころか厚遇ではないかとの批判が広がった。局長の妻は取材に対し、夫が昇進したとは知らなかったと涙ながらに否定し、一家で眠れない日々が続いていると語ったと報じられている。NACC側はこの異動について、懲戒に向けた配置転換を検討している段階だと説明している。
事件の経緯と3つの容疑
現場はノンタブリー県ムアン郡、ラチャプルック通りの陸橋付近である。深夜、局長が運転するピックアップトラックが配達中のライダーをはね、43歳の男性配達員が片腕を失う重傷を負って死亡した。局長の呼気からは、法定基準である50mg%の約3.8倍にあたる189mg%のアルコールが検出されている。当初は別の「黒服の男」が自分が運転していたと名乗り出る一幕があり、局長自身も当初は運転を否定していたが、その後に自らが運転していたと認めた。警察は危険運転致死、飲酒運転、救護義務違反の3つの容疑を適用し、身代わりを申し出た男の虚偽申告についても立件を検討しているという。なお当初は「NACC副報道官」と報じられたが、同委員会は本人が捜査特別事案局長であり副報道官ではないと訂正している。
「特別扱いはしない」とするNACCの対応
NACCは被害者遺族に哀悼の意を示し、事実関係を確認したうえで法律に沿って懲戒手続きを進め、特別扱いはしないと強調している。一方で局長は現時点では職にとどまっており、配置転換はあくまで検討中の段階だとされる。身内の不祥事をどこまで厳格に処分できるかは、汚職を摘発する機関だからこそ厳しく見られる。葬儀の場では遺族や仲間のライダーの怒りが噴き出す場面もあったと伝えられており、遺族や同業者の間では早期の厳正な対応を求める声が強まっている。