スワンナプーム空港の税関が、肥満治療や糖尿病の治療に使われる注射薬「チルゼパチド」137箱を無申告で持ち込もうとしたとして、中国人の乗客を摘発した。押収された注射薬の総額は213万バーツ(約940万円)にのぼる。世界的に需要が高まる「やせ薬」が、税関をすり抜ける形で持ち込まれようとしていた。
137箱の注射薬、バングラデシュ経由で
摘発があったのは5月23日。バングラデシュから到着した中国人の乗客の荷物から、注射器入りのチルゼパチド137箱が見つかった。いずれも正規の通関手続きを経ていなかったという。
チルゼパチドは、本来は2型糖尿病の治療薬で、血糖値や食欲を調整するホルモンに働きかける。体重を減らす効果もあることから、近年は減量目的でも処方されるようになった。乗客は、関税法に基づく無申告輸入の罪に加え、薬事法違反などの疑いでも調べを受けている。
世界的な「やせ薬」ブームと持ち込み
チルゼパチドは、欧米で急速に広まったGLP-1系の減量・血糖降下薬の一つである。需要が供給を上回る状況が続き、各国で品薄や価格高騰、そして無許可の持ち込みや横流しが問題になってきた。今回の摘発も、その世界的な潮流がタイの空港に及んだ事例といえる。
こうした薬は本来、医師の処方と管理のもとで使うものだ。個人輸入や非正規ルートで入手したものは、品質や保管状態が保証されず、健康被害につながる恐れがある。
空港の税関は何を見ているか
タイの空港税関は、近年こうした医薬品や美容関連製品の無申告持ち込みの摘発を強めている。先日も、無許可の美白美容液が大量に押収される事案があった。出入国の際に申告が必要な物品の範囲は意外と広く、知らずに大量に持ち込むとトラブルになりかねない。高額な医薬品や、同じ品目をまとめて持ち込むケースは、税関で確認の対象になりやすい。