タイの決済インフラ運営会社NITMX(National ITMX)が、2026年4月のプロムペイ(PromptPay)取引データを公表した。1か月の取引件数は22.1億件で、前年同月の19.6億件から+13%。一方で取引総額は4.24兆バーツと、前年の4.28兆バーツから1%だけ目減りした。日本円にしてざっと19兆円規模(1バーツ=4.5円換算)の決済が、1か月で動いている計算になる。
注目したいのは、この月にソンクラン(タイ正月)の長期休暇が含まれている、という点だ。普段ならビジネス向けの決済が落ち込み、家計消費と観光に経済の中心が移る時期。それでも件数は前年より2.5億件分膨らんだ。
NITMXはこの動きについて、プロムペイの役割が、商業取引を回す道具から、タイの経済そのものを24時間支える基盤へ広がってきている、と説明している。屋台や市場、タクシー、グラブの送迎料金まで、ありとあらゆる小さな支払いがQRに置き換わっていく光景を、住んでいる側はもう十年近く前から見続けてきた。それでもまだ伸びる、という事実の方がむしろ驚きに近い。
引っかかるのは、件数が13%伸びる横で総額が1%だけ縮んだ、というアンバランスさだ。乱暴に1件あたりの平均金額を割り戻すと、前年が2,180バーツ前後で、今年は1,920バーツほどになる。月単位の集計ベースでも、1回の決済が「少額化」している傾向ははっきり見える。
これは意味するところが大きい。大口の企業間決済が減ったというよりも、小口の生活決済が増えた結果としての、平均値の押し下げと読むのが自然だろう。50バーツのカオマンガイ、80バーツの市場での買い物、120バーツのタクシー。そんな金額が、現金ではなくQRで処理される頻度が、ここに来てもう一段増えている。
ソンクランの帰省ラッシュの最中でも、送る側も受け取る側もスマホ画面を覗き込んでいる。タイのデジタル決済が、もう「進んでいる」とか「便利だ」とかいう話の段階を越えて、現金より自然な選択になっている、ということが、この月次数字からじわじわと伝わってくる。

