タイ・パタヤ市が、市内で営業する約480店の大麻店に対して「星付き店舗(Star-Rated Cannabis Shops)」認証制度を5月20日に発表した。観光客や住民から「煙と臭い」「青少年への販売」などの苦情が続く現状を受け、現在国会審議中の「大麻・ヘンプ法(Cannabis and Hemp Act)」の発効に備えた事前準備の位置付け。アヌティン政権が2025年10月に娯楽用大麻の禁止を閣議決定した流れの中で、世界的観光地パタヤが業界の閉鎖ではなく「品質認証で観光イメージを守る」道を選んだ形になる。
クリサナー副市長主導の会合
会合はパタヤ市庁舎タップラヤ会議室で5月20日に開かれた。議長を務めたのはクリサナー・ブーンサワット副市長で、出席者にはパタヤ大麻運営者クラブのプランチャイ・チャイモントリー事務局長、伝統医学専門家のナター・マハーマハーヨート医師、市内の大麻事業運営者らが顔をそろえた。
議題の中心は2点。1つは現在国会で審議中のタイ大麻・ヘンプ法への対応準備で、既存の認可店舗が法令への調整後も営業を継続できる枠組みを整えること。もう1つが今回新設される「星付き店舗」認証プログラムの導入だった。
クリサナー副市長は「大麻の煙と花の臭いについて市民からの苦情が絶えず、観光地パタヤのイメージに損害が出ている。児童・精神疾患のある住民への悪影響も指摘されており、業界の閉鎖ではなく適切な規制下での営業継続を目指す」と説明した。
「星付き店舗」認証の仕組み
新制度の柱は、厳格な公衆衛生・法的基準を満たした店舗に対して公式ステッカーを交付する仕組み。地元住民と観光客の信頼を構築し、責任ある事業者を可視化するのが狙いとされる。
認証の基準は4つの軸で組み立てられる。
- 未成年者への販売を物理的に防ぐ仕組み(身分証提示・店舗構造・年齢確認手順)
- 公開喫煙と花の臭気に対する近隣配慮(換気・遮蔽・店舗位置)
- 娯楽用から医療・健康用途への商品構成転換
- 違法業者と一線を画す登録・在庫管理
将来的には、パタヤで既に展開している飲食店認証「Good Food Good Health」モデルと連動させ、観光客が利用する店舗を一目で判別できる仕組みに拡大する構想もある。
全国18,433店から7千店以上が閉鎖
タイは2022年6月にアジアで最初に大麻を合法化し、2025年末時点で全国の大麻関連施設は18,433店まで膨らんでいた。しかし、2025年10月23日にアヌティン政権が娯楽目的の利用を再禁止する法改正案を閣議承認して以降、すでに7,000店以上が閉鎖に追い込まれている。
タイ保健省は2026年1月5日に新省令案を発表し、大麻の販売・取り扱いを認める事業者を医療機関・薬局・ハーブ製品販売施設・伝統医の業務場所の4種類に限定する方向に舵を切った。省令案は内閣承認済みで、法制機関の審査を経て保健大臣の署名で施行される見通し。
国会で審議中の大麻・ヘンプ法はまだ単一の包括的法律として成立していないが、施行された段階では現行の登録店舗も大幅な業態変更を迫られる見込みで、2026年中に5,000〜6,000店規模の免許失効が起きるとの予想も出ている。
なぜパタヤは「閉鎖」より「認証」を選んだのか
タイ各地で大麻店の取り締まりが進む中で、パタヤ市が「閉鎖」ではなく「認証」を選んだのは、観光業との結びつきが特殊だからとされる。
パタヤは外国人観光客の長期滞在地として知られ、市内の大麻店の顧客の多くが外国人。Pattaya News はじめ地元英語メディアでも、欧州・北米・インド・中東からの観光客が大麻店を訪れる光景が日常的に報じられている。市内約480店の認可店舗に加え、無認可営業も相当数あるとされ、市当局は包括的なデータ収集を並行で進めている。
クリサナー副市長は「世界的観光地としてのパタヤの評判を守ることが最優先。業界の閉鎖は地元雇用と税収を直撃するが、放置すれば家族連れ観光客が離れる」と述べ、認証制度による「業界の健全化」を強調した。
日本人の帰国後逮捕事例と観光景観の今後12-18か月
パタヤを訪れる日本人にとって、今回の認証制度は実用的な目印になる可能性が高い。
タイの大麻店は表面上は合法登録でも、内部では未認可の輸入花や濃度の高い濃縮製品を扱うケースが指摘されている。日本国外で大麻を使用した場合でも、帰国後に日本の大麻取締法違反で逮捕される事例があり、日本人にとって店舗の合法性以前に「日本では完全違法」という事実が変わらない。
ただし、観光客が大麻店の近隣を歩いて煙を吸い込む受動的な接触は避けがたく、今回の「星付き店舗」認証によって近隣配慮を徹底した店舗を判別できるようになれば、家族連れ・子連れ旅行の体験は向上することになる。
タイ保健省の2026年1月省令が施行された段階では、街頭の認可看板も大幅に減る見込みで、パタヤの観光景観も今後12〜18か月で大きく変わる可能性がある。



