タイ東北部ウドンタニ県シタト郡で5月14日、11歳の少女が先輩によって誘拐・拘束され、4時間にわたって暴行を受けていたことが明らかになった。被害は5月1日に発生、先輩らは少女の髪を掴んで引きずり回し、ハイヒールで口を塞ぐなど凄惨な暴行を加えたという。母親が警察に届け出たものの「翌日来て」と一度突き返された経緯があり、不公平を感じた母がパウィーナ財団に支援要請、ウドンタニ県知事が直接介入する事態に発展した。タイの児童保護体制と現場警察の初動対応の問題が、痛ましい事件を通じて表面化している。
5月14日にウドンタニ県知事が現場介入
事件への対応が表に出たのは5月14日。ウドンタニ県のラチャン・ズンフア知事が、シタト郡長ソンポン・プラディットドゥアン氏、シタト警察署長サクシット・タナキットパイロート警視(PSS)、タンロンタム情報センター長プラチャヤー・パトゥムチョンプー氏(中尉相当)、ウドンタニ県子ども・少年青年福祉局スタッフ、児童青年保護施設の関係者らに対し、事実調査と被害児童の家族支援を行うよう指示した。
母パンニパさん38歳の証言
被害児童(11歳)の母親パンニパさん(38歳)の証言によると、事件は5月1日に発生した。当日、娘は数歳上の「先輩」の女子に誘拐・拘束された上で、複数人による組織的な暴行を受けた。暴行の内容は、髪を掴んで引きずり回す、ハイヒールで口を塞ぐ、繰り返し叩く・蹴るといった凄惨なもので、推定で約4時間にわたって続いたとされる。
警察初動の遅れと「翌日来て」の対応
母が娘の被害を知って警察に届け出を申し出たところ、捜査担当の警察官から「翌日来てください」と一度突き返された。証拠保全と早期措置が必要な児童虐待事案で、初日の対応が遅れたことに母は不公平を感じ、児童虐待の専門救援団体である「パウィーナ財団」へ直接苦情を送る形で表に出した経緯がある。
パウィーナ財団が苦情受理、県知事が動く
パウィーナ財団は、タイで著名な児童・女性虐待支援団体で、財団がメディアと連携することで多くの「埋もれかけた事件」が表に出てきた実績がある。今回も財団による苦情受理が、ウドンタニ県知事への報告につながり、地方行政が一斉に動く流れになった。
タイの児童保護と警察初動の課題
タイの児童虐待事案では、現場の警察官の初動対応の質に大きなばらつきがある。家族同士・年齢差の少ない加害者・被害者のケースで、捜査現場が「子ども同士の喧嘩」として軽く扱う傾向は、過去にも繰り返し指摘されてきた。今回のケースは「翌日来て」の対応が初日に出たことが、構造的問題として浮き彫りになった事案だ。
在タイ日本人駐在員家庭が頭に入れたい点
タイの私立学校・インターナショナルスクールに通う日本人の子どもが、現地子ども同士のトラブルに巻き込まれる可能性は低くないが、日本人家庭の場合は学校カウンセラー・大使館領事部・在タイ日本商工会議所などへ早期相談する経路が比較的しっかりしている。今回のような「警察に届け出ても初動が遅い」事案に直面したら、パウィーナ財団のような専門NPO、ソーシャルワーカー、メディア取材といった複数チャネルを並行して使うのが、結果として子どもを守る現実的な姿勢だ。