タイ中部サラブリー県のクバ集落で5月14日、鶏唐揚げ店を表向きにして覚醒剤(ヤーバー)を密売していた49歳の女性が現行犯逮捕された。客が「お菓子(カノム)」と隠語で注文しに来るのを警察が察知、踏み込みでヤーバー97錠を机の下から押収した。女性は「子どもの学費を稼ぐためだった」と弁明している。タイの地方コミュニティで、生活困窮を背景に密売が広がる現実を象徴する事案だ。
サラブリー警察が密売現場を急襲
サラブリー市警察署のサクチャイ・グライウィーラデチャチャイ警視(署長)が、副署長のセッタハーン・セッタパーコン警部に対して現場急襲を指示し、5月14日に踏み込み作戦が実施された。場所はサラブリー県ムアン郡パークプリオ町のクバ集落(カオクバ)。地域住民からの情報提供がきっかけだった。
「お菓子」を求める客の不自然さで察知
警察が違法行為を察知した手がかりは、店に来る客の不自然な行動だった。鶏唐揚げ店であるにもかかわらず、客が「お菓子(タイ語:カノム)」を求めに来るケースが多発していた。タイ語の俗語で「カノム」は覚醒剤(ヤーバー)を意味する隠語の一つで、これが警察に伝わって踏み込みが決定された。
容疑者は49歳のサイソンマー氏、机の下からヤーバー97錠
警察が容疑者として確保したのは、ナーン・サイソンマー氏(49歳)。店内の机の下から、透明な小袋(ジップロック式)に分けられたヤーバーが押収された。内訳は10錠入りが9袋、7錠入りが1袋で、合計97錠。販売価格は1錠20バーツ(約97円)が基本で、客から値切られて1錠18バーツ(約87円)で売る場面もあったという。
「子どもの学費のため」と弁明、タイ家計の現実
逮捕後の事情聴取で、サイソンマー容疑者は「子どもの学費を稼ぐために密売していた」と弁明した。前のサイクルで報じた通り、タイの保護者の27.1%が新学期に借金で学費を払う深刻状況にあり、生活困窮を背景に違法収入に手を染める地方住民は決して珍しくない。鶏唐揚げという見た目の業態と、覚醒剤密売という裏の業態が、49歳の母親の中で同居していた構図だ。
在タイ日本人にとっての見え方
直接巻き込まれる事案ではないが、地方の屋台・小さな食堂・市場で「物を売っているだけに見えるが、実は別の何かが流通している」場面は、タイの社会経済の構造として存在する。日本人観光客・駐在員が地方を旅する際、地元の店舗を信頼するのは基本だが、「何か変だな」と感じる場面では深入りしないのが、トラブル回避の現実的な姿勢だ。タイ警察もこうした「偽装店舗型」の麻薬密売対策を継続的に行っている。