タイの国立貯蓄基金(กอช./NSF)が5月14日に公表した2026年の学期開始期の家計支出調査によれば、保護者の学費・関連支出は累計660億バーツ(約3,213億円)に達し、調査開始17年で過去最高を記録した。27.1%の保護者が「現金が足りず借金または資産担保で学費を払った」と答えており、タイの家計の教育費負担が深刻なレベルに達していることが明らかになった。在タイ日本人駐在員家庭の生活実感とも重なる、生々しいデータだ。
学期開始費用660億バーツ、調査開始17年で最高
調査主体は国立貯蓄基金(NSF)と、タイ商工会議所大学経済予測センター。2026年の学期開始期(5月)に家計が学費・教科書・制服・通学費・課外活動などに支出した合計額は、調査開始から17年で最高となる660億バーツ規模に達した。前年比+6%の伸びで、教育費が物価上昇率を上回るペースで膨らんでいる。
保護者の27.1%が「借金または資産担保で学費」
調査結果のうち、もっとも衝撃的なのは「保護者の27.1%が、自己資金で学費を払えず、借金または資産担保で資金を確保した」と回答した点。実質的に3〜4世帯に1世帯が、新学期のために借金しているという計算になる。タイの家計の経済的余裕の薄さと、教育費の重さが、改めて数字で示された。
NSFが「若者世代の貯蓄習慣」を訴え
NSFはこの調査結果を機に、15歳以上の中学・高校・大学生に向けて「お小遣いの一部から1日5〜10バーツの貯蓄を始める」キャンペーンを呼びかけている。NSF経由で貯蓄した場合、国が50%補助金を上乗せする制度があり、年5,000バーツの貯蓄なら国が2,500バーツ加算する仕組みだ。「貯蓄習慣を若いうちに身につけることが、将来の借金リスクを下げる」というメッセージだ。
タイ家計の構造的問題
タイの家計総債務は、すでに GDP比 80%超で世界でも高水準のグループに入る。教育費だけでなく、自動車ローン、住宅ローン、消費者ローン、クレジットカード負債が積み重なる中で、新学期の臨時支出が借金を増やす構図になっている。中央銀行(BOT)が政策金利を1%に引き下げ、LTV対策を延長するなどの金融緩和を打ち出しているのも、家計を下支えする狙いの一つだ。
在タイ日本人駐在員家庭との比較
タイで日系企業の駐在員家庭の場合、教育費は本社負担(インターナショナルスクール費)が手当されているケースが多く、660億バーツの統計に直接含まれない場合がほとんどだ。一方、配偶者がタイ人で現地学校を選んでいる家庭、現地スタッフを雇用している家庭にとっては、これは隣人の現実そのもの。給与水準・採用条件・福利厚生の見直しを、こうした家計実態を踏まえて行うのが、人材定着の上で大事な視点になる。