タイ麻薬取締庁(ONCB)・バンコク市警察191特殊部隊・陸軍情報部が5月12日、バンコク・ラットブラナ地区の給油所でメタンフェタミン(氷)300kgを密輸バンに隠匿していた6人組を一斉摘発した。土地・洗濯ビジネス・車両・ブランド品・宝飾類など関連資産計4,600万バーツ(約2億1,160万円)を押収。スリヤ・シンハカモルONCB事務局長が5月13日に発表し、押収した300kgは「第3国への国際密輸を計画していた」と明らかにした。タイが東南アジアの麻薬中継地として機能している実態を改めて浮き彫りにする大規模摘発だ。
摘発の構図と押収規模
事件の流れは典型的な東南アジア麻薬流通のパターンをたどる。ミャンマー側のゴールデントライアングルで製造された麻薬がタイ北部国境を経由して運ばれ、バンコク・ラットブラナ地区の給油所が中継拠点となった。バンに300kgを隠匿していた6人をONCB・特殊部隊・陸軍情報部が情報共有のうえ一斉摘発し、関連資産4,600万バーツも押収した。国際警察(インターポール)との協力も並行する。
メタンフェタミン300kgの末端価格は国内で150〜300億バーツ規模に上る。オーストラリアなど国際市場への輸出価格はさらに高く、1錠あたり20〜40豪ドルとされる。東南アジア最大級の押収量に相当する。
押収資産4,600万バーツの内訳は、複数物件の土地・マネーロンダリングに使われていた洗濯ビジネス・高級車やトラック・ロレックスやエルメスなどのブランド品・金や宝石類だ。銀行口座は凍結の対象となり、暗号資産についても調査が進められている。
3機関が連携した摘発の背景
主導したONCB(Office of the Narcotics Control Board)は首相府直属の独立機関で、2008年の正式設立以来、情報収集・捜査・国際協力を担う。職員は約3,000人で、年間数千件の麻薬事件を処理している。
バンコク市警察191特殊部隊は武装犯人・薬物犯罪対応を専門とする24時間体制の精鋭部隊だ。陸軍情報部は国境警備の延長として麻薬密輸ルートの監視を行い、AI・衛星画像も活用している。今回のように3機関が連携する大型案件は増加傾向にある。
「第3国密輸」とタイの中継地問題
今回の300kgが向かう予定だった「第3国」は、オーストラリア(高価格市場)・日本(厳格な取り締まりゆえに高利益)・韓国・台湾・欧州などが挙げられる。海上密輸(コンテナ船)が主な手段で、空輸や人身運搬人(ミュール)の利用も増えている。暗号通貨による資金洗浄が定着しており、バンコクは東南アジアの中継地として機能し続けている。
法的処遇は厳しく、麻薬法第65条(大量所持・密売)・第66条(国際密輸)ともに終身刑または死刑が定められる。資金洗浄罪・越境組織犯罪罪・財産没収(4,600万バーツ)も科せられる見通しで、6人全員が最高刑の対象になる可能性がある。
タイ政府は「タイ無麻薬政策」のもと国境警備強化と国際協力(中国・ミャンマー・ラオス・カンボジア)を推進しており、今回の大型摘発はその成果の一つに数えられる。一方でゴールデントライアングルからの密輸は根絶には至っておらず、タイの麻薬問題は構造的課題として続いている。