タイ北部パヤオ県で、日本と中国行きの団体ツアーをめぐる集団被害が表面化した。被害者は250人を超え、被害総額は1,000万バーツに達する可能性があるという。日本円にしておよそ4,600万円。地方の県で発生した詐欺被害としては、相当に大きな規模である。
5月13日、被害者20人余りがパヤオ県の「タムマナット・プロムパオ財団」に救援を求めて駆け込んだ。財団は被害者の代理として警察への陳情に同行し、ドクカムタイ警察署のボウォン・チャイカム警察署長が被害申告を受理した。被害者は5つのグループに分かれていて、それぞれパヤオ県とチェンライ県内のいくつかの郡から集まっていることが分かっている。
ツアーの売り口は、フェイスブックとLINEの広告だ。被害者の一人、姓を伏せて取材に応じたプラソンさんによると、彼のグループはSNS上で日本行きパッケージツアーの広告を見つけ、1人あたり39,888バーツで購入した。日本円で18万円程度、地方の生活実感からするとそれなりに大きな出費だ。
代金は条件通りに分割で全額支払い済みだった。しかし渡航日が近づくと、業者側から「もう一度支払いが必要だ」という通知が届いた。すでに完済しているのに追加請求が来る、という時点で多くの被害者は不安を感じたはずだ。それでも追加分まで払った人もいた。結果として、ツアー出発日に飛行機に乗れた人は誰もいなかった。
引っかかったのは、被害者が「都市部の旅行慣れした層」ではなく、北部の地方コミュニティで日常的にSNSを使っている人たちだという点だ。フェイスブックやLINEの広告は、地方の住民にとって今や旅行情報の最大の入り口になっている。そこに割安なツアー価格をぶら下げ、コミュニティの口コミで参加者を一気に集める手口は、被害が出始めるとそのまま雪だるま式に膨らむ構造を持っている。
タムマナット・プロムパオ財団は、北部を地盤にする現職政治家の名前を冠した組織で、地元住民にとっては身近な駆け込み先のひとつだ。被害者がまず警察ではなく財団に集まったのは、地方の人間関係の中で「まずどこに相談するか」という順番が読み取れる場面でもある。捜査の進展次第では、業者の登記情報や運営実態にも光が当たることになりそうだ。


