ウドンタニ県ナカー地区の住宅で2026年5月12日、28歳の妻ラジャナーさんが39歳の夫タウィーサックさんの右胸をナイフで深さ約7.6センチ刺して重傷を負わせた。発端は妻が夫の衣装ダンスに入っていたコンドームを「浮気相手に使うため」と疑い、枕の下に隠したことだった。夫がこれを発見して口論になり、一晩中の言い合いの末に朝の刺傷事件につながった。
事件の経緯
妻は口論の中で覚醒剤(ヤバ)購入のための金銭を夫に要求したが、夫が渡したのは20バーツの白酒(ラオカオ)にとどまった。さらに夫が朝に寺院の儀式へ出発しようとしたことが妻の怒りに火をつけた。妻は「愛しているので深く刺すつもりはなかった」と供述した。
タウィーサックさんは近くの病院で治療を受けており、命に別状はないとみられる。妻は傷害罪のほか、尿検査で覚醒剤陽性が判明したため覚醒剤所持・使用の疑いでも起訴される予定だ。
嫉妬と薬物と暴力の連鎖
この事件は典型的な「嫉妬×薬物×家庭内暴力」の連鎖を示している。タイ農村部では年間1,500件以上の家庭内殺人・殺人未遂が報告されており、薬物関与が約30%、アルコール関与が約40%を占めるとされる。覚醒剤(メタンフェタミン、通称ヤバ)の依存は判断力と衝動制御を著しく低下させ、わずかな刺激で激しい暴力に転じるリスクがある。
コンドームをめぐる嫉妬事件
コンドームを見つけて浮気を疑う事件はタイで散発的に報じられる。一般的に避妊・性病予防の目的で保有するものだが、パートナーへの強い疑念が合理的判断を超えて暴力に至るケースがある。タイ伝統の家族観や性別役割意識が現代の核家族化とぶつかり、不信感が蓄積しやすい背景がある。
タイのDV対策
タイは2007年に家庭内暴力防止法(PDVA)を制定し、被害者保護と加害者への接近禁止命令を整備した。しかし農村部では警察への届け出が少なく、「家庭内のことは外に出さない」という慣習が被害を潜在化させている。覚醒剤依存を抱えるパートナーへの専門的介入システムも十分とはいえない。

