タイ・ブリーラム県プラコンチャイ郡シーリアム区シーリアム村で5月9日、地元の伝統行事「バンファイ祭り(雨乞いロケット祭り)」で打ち上げられた手作りロケット2本が、約1km離れた住民2軒に直撃する事案が発生した。5月12日に報道され、タイの伝統文化と現代の住宅地での安全管理のジレンマが改めて浮き彫りになった。
1軒目では32歳の女性タニッシャー・テチャクンタナサップさんの自宅窓ガラスが割れ、直径約2インチのロケットが窓のすぐ近くに落下した。2軒目はロケットが敷地内に落下したが被害は限定的で、けが人は出なかった。村長が補償対応を約束したが、住民は「伝統行事は理解するが、住民に危険が及ぶ場合は中止すべきだ」と訴えた。
バンファイ祭り(งานบุญบั้งไฟ)はタイ東北部・ラオスに根付く雨乞いの伝統行事だ。竹製の手作りロケットに黒色火薬を詰めて天高く打ち上げ、数百〜数千本の発射で空を彩る。5月の雨季入り前後に集中して開催され、村単位で自主運営される文化的アイデンティティの象徴とされている。
直径2インチの中型ロケットは発射後の軌道予測が困難で、強風に流されやすい。燃料切れで落下する際の破壊力は大きく、住宅地への落下リスクは常態的に存在する。タニッシャー氏は「祭り会場に連絡しようとしたが適切な連絡先が分からなかった」とFacebookに投稿し、補償対応を担う機関が不明確な現状を訴えた。
村単位の自主運営には安全基準の不統一、住宅地からの距離基準の未遵守、保険加入の不備といった構造的問題がある。タイ政府は登録制度の導入や安全基準の制定を検討しているが、伝統文化保護の観点から強硬な規制には踏み出せていない。東北部全域でバンファイ祭り期間中の被害は年間数十件規模で、窓ガラス破損・屋根損傷・車両被害のほかまれに重傷・死亡事故も報告されている。
在タイの日本人が5月に東北部(イサーン)を旅行する際は、バンファイ祭りの開催日程を事前に確認し、祭り会場から十分な距離を保つ宿泊計画を立てることが推奨される。

