プーケット県ラワイ区のウィンドミル・ビューポイント周辺で5月8日金曜日、豚の貯金箱(ปิ่นโต型コインバンク)を積んだカートを高齢の屋台店主が急な坂道を必死に押し上げていた場面で、通りすがりのロシア人観光客が車を停めて降り、カートを坂道の上まで一緒に押して助けた。その様子が地元住民に撮影され、Facebookで拡散したのを皮切りに、複数のSNSプラットフォームで急速に共有されて「最近で最もシェアされた人情話ビデオ」となった。
ウィンドミル・ビューポイントはプーケット南部ラワイ区にある観光名所で、風車のオブジェと海の眺望で知られる。坂道の傾斜は車両でも力強くアクセルを踏まないと上がれないほど急で、自力でカートを押し上げる高齢者にとっては相当な体力負担となる。屋台店主は重い貯金箱の在庫を運搬中だったとされる。
ロシア人観光客の身元は公表されていないが、彼は車で同所を通過中に状況を見て、何のためらいもなく路肩に停車。車を降りて屋台店主のところに歩み寄り、カートを上り坂で押す手助けを始めた。短い時間だが、明確な「困っている人を見たら助ける」という反射的な行動だった。
地元タイ人住民が一連の様子を撮影してFacebookに投稿。「これがあるべき観光客の姿だ」という肯定的コメントが急速に集まり、複数のプラットフォームで拡散した。代表的なコメントには「こういう良い観光客なら、何千人来ても歓迎する価値がある(One good tourist like this is worth welcoming by the thousands)」というものがある。
タイのプーケットを巡る最近のニュースは、必ずしも明るいものばかりではなかった。5月10日にもパッタヤ・カマラのカフェでインド人観光客5人が集団失神し1人死亡する事件、フリーダム海岸のマフィア化問題、観光業界全体の危機(パッタヤホテル稼働率30%急落)など、観光地ガバナンスとイメージの問題が相次いで顕在化していた中で、今回のロシア人観光客の善行は「対照的な希望」として歓迎されている。
過去には、外国人観光客の不品行(オーストラリア人観光客の万引き事件など)がタイのSNSで批判の対象になることが多かった。しかし今回のように、外国人が現地住民を尊重し助ける場面が拡散されることは、タイ・外国人の関係性の改善に小さくない貢献を果たす。観光地の住民・店主が外国人を「迷惑な来客」ではなく「助け合えるパートナー」として見直すきっかけになる。
タイ在住の日本人駐在員にとっても、この種の「街中で困っている地元住民に手を貸す」行為は、日本の感覚以上にタイ社会で評価される。タイ人の高齢者・障害者・子供を伴った母親が困っている場面では、思い切って手を貸すことが、結果的に自分の生活の安全と心地よさにもつながる。日本語の「お互い様」の感覚が、タイの「ナム・チャイ(น้ำใจ、思いやり)」文化と直接的に重なる場面だ。