アヌティン・チャーンウィーラクン首相(内務大臣兼任)が5月10日10時半、プーケット国際空港に到着し、観光地で長年問題化していた公共海岸・国有地への侵食を視察した。対象はタラン郡チェンタレー区のバンタオ海岸と、ムアン郡カロン区のフリーダム海岸の2か所。
直接の引き金は、フリーダム海岸の利権を追及していたプーケット選出議員に向けて、地元の有力者がSNSで「議員を殺しても保釈金は20万バーツで済む」と脅迫文書を流した事件である。これを受けて議員側が首相と環境関係閣僚に直接働きかけ、首相自らの現地視察につながった。
同行したのは、ウォーラシット・リアンプラシット内務副大臣、トライスリ・トライソンナクン首相秘書官、アサダ・サムパンタラット内務省事務次官、サムラーン・ヌアンマー国家警察副長官、トラクン・トータム内務省検査官、プロイタレ・ラクサミーセーンチャン首相府副報道官ら。プーケット県知事ニラット・ポンシティーターウォン氏と現地行政幹部が状況を報告した。
バンタオ海岸では先行して、5ライ(約8,000平方メートル)超の公共海岸が業者によって囲い込まれ、レストラン16店舗ほかの構造物が違法に設置されていた問題が摘発されており、政府が公共資産として奪還する作業が進められている。フリーダム海岸はカオ・ナークート国立保護林の保護区域に隣接し、こちらも侵食を巡って3月下旬に100人超の林野・行政職員による一斉調査が入った。
プーケットでは直近も外国人取締り強化(無免許運転で国外退去)、観光警察によるナイジェリア・ベルギー人のコカイン逮捕など、当局のガバナンス引き締めが続いている。今回の海岸侵食視察も、その流れの上にある。
プーケットは日本人が好んで訪れるリゾート地で、バンタオはラグーナ周辺の高級リゾート、フリーダム海岸はパトンから船で渡れる隠れビーチとしてSNSで知名度が高い。観光客向けに業者がビーチの一区画を囲い、デッキチェアやドリンク・食事を提供して場所代を取る運用は黙認的に広がってきたが、その一部が公共海岸・国有保護林を実質的に占有していた構図だ。
首相が現職のうちに、しかも内務大臣として直接乗り出したことで、プーケットに限らずパタヤ、サムイ、クラビなど他の観光地でも同様の囲い込み・違法構造物の摘発が連動して進む可能性がある。観光客の立場では、これまで「料金を払えば独占できる」とされていたエリアが正規の公共スペースとして開放され直す動きであり、長期的にはビーチアクセスの自由度が増す方向に働く。