タイ移民局が、武器庫水準の銃器・手榴弾を自宅に隠していたとして拘束中の中国人ミンチェン・サン氏(31)を24時間態勢で監視している。容疑者が「死にたい」「爆弾で自分を吹き飛ばす」と繰り返し漏らしているためで、自殺による責任逃れを警戒した措置。同日には、これまで浮上していた警察拳銃教官カチェントー氏と海軍上等兵メーティー氏の2人に加え、元海軍兵2人「ジャオ・ヘープ」「ジャオ・ボーイ」が新たに銃売買ネットワークに関与していた疑いが浮上した。
捜査当局が公表した銃の流通経路は次の通り。パッタヤ射撃場の射撃訓練教官カチェントー氏が起点となり、海軍上等兵メーティー・ナーロム氏に渡る。ここから元海軍兵のジャオ・ヘープ、続いてジャオ・ボーイの2人を経由して、口座貸与役・仲介者のジャムロン氏へ。そこから最終購入者であるミンチェン氏に到達する5段階の連鎖だ。
ジャムロン氏は警察の取り調べに対し、初期段階で「現金500バーツとビール1ケースを受け取って口座を貸し出した」と供述したという。組織犯罪としては破格の安値で末端の協力者が動いていた構図で、捜査本部はジャオ・ヘープとジャオ・ボーイの2人について行方を追っている段階だ。
容疑者の身柄をめぐっては、すでに別途進行する関連捜査で警察拳銃のサイマイ警察署副捜査官名義の銃が4回転売され10万バーツで容疑者に渡った経路が解明済み。さらにアヌティン首相が「最深部まで捜査拡大」を指示し、BHQと呼ばれる越境犯罪組織との関連も視野に入っている。
容疑者は鬱病を主張しており、「爆弾で自殺するつもりだった」とも発言。一方で、自宅からはC4爆薬・手榴弾・防弾チョッキなど18品目が押収され、カンボジア国境近くの「911特殊訓練キャンプ」での爆撃・射撃訓練動画も発見されている。捜査当局はこれを単独の自殺準備とは見ず、組織的な武器調達と訓練のネットワークが背後にあると判断している。
事件の余波としてフリービザ滞在期間の60日→30日への短縮が政府レベルで加速しており、外国人の長期滞在を許す制度設計の見直しに直結している。タイに長期出張・帰省する日本人駐在員家族も影響範囲に含まれる。
警察関係者・現役自衛官・元海軍関係者が次々と銃売買ネットワークに名を連ねている構図は、タイ国内の制度的腐敗の深さを示している。今回浮上した「ジャオ・ヘープ」「ジャオ・ボーイ」の2人がどの部隊に所属していたか、退役後にどのような経緯で武器を扱える立場に残っていたかが今後の焦点となる。