マレーシアとの国境に面するタイ深南部のナラティワート県で、国境付近に住む34人のタイ人子どもたちが毎日マレーシア側のランタウパンジャン地区の学校に通学していることがわかった。タイ語の取材では34人だが、マレーシア側のソースによっては人数に差がある可能性があり、実態として30人前後の子どもが橋や通路を渡って毎朝マレーシアの学校に向かっている。
こうした事例が生まれる背景はいくつかある。国境地帯の村落では言語・民族・宗教の面でマレーシア側の学校がタイ側より「身近」な場合がある。深南部はマレー系ムスリムが多数を占め、タイ語より南部マレー語(ジャウィ語)を第一言語として使う家庭も多い。マレーシアは初等教育で英語と宗教教育のカリキュラムが充実しており、親が選択する動機になっている。
タイとマレーシアの間には1979年の教育協定があり、国境地帯の子どもが相互に越境通学することを認める規定があるとされるが、運用は地域・学校によってばらつきがある。国境の出入り管理は出入国ポイントを通じた管理だが、地域の慣習として緩やかに許容されてきた。
ナラティワートを含む深南部3県はタイ国内で治安情勢が最も厳しい地域の一つで、分離独立派によるテロ・銃撃・爆発事件が2000年代以降継続している。学校・教師が標的にされる事件も発生しており、親が「安全な場所で学ばせたい」とマレーシア側を選ぶ側面もある。
タイ政府は深南部の学校教育の質と安全確保に毎年多額の予算を投じているが、地元の信頼回復と教育の定着には時間がかかっている。

