タイ北部ランパーン県で4月26日夜、地元の元コミュニティ会長の男が、麺料理店脇で記者男性を銃で射殺し、その場にいた女性記者とその妹をナイフで斬りつけて重傷を負わせ、バイクで逃走する事件が起きた。タイのジャーナリストが現場で殺害される事案は深南部の事件以外では珍しく、警察は容疑者の追跡を急いでいる。
通報は4月26日21時30分、ランパーン県191受付センターに入った。場所はランパーン県ムアンランパーン郡チョムプー副区シーポンチャイコミュニティのパホンヨーティン通り、ランパーン・インターテック大学(旧)向かいの麺料理店「クイティアオ・アハーンタームサン」の脇エリアだ。ケラーンナコン警察署員と鑑識班、ランパーン病院の法医、救援団体スワーンナコンランパーンが現場に駆け付け、確認を進めた。
死亡したのは50歳前後のチャイユットさん(姓非公開)。ランパーン・ヴィアントン・ホテルのレストラン部門で働きながら地元のローカル記者として活動していた人物だ。胸を貫通する銃弾を1発受けて即死した。
負傷したのは女性2人。1人はパナッダさん(通称ビー、こちらも記者として活動)、もう1人はその妹で、容疑者からナイフで斬りつけられ重傷を負った。2人ともランパーン病院に搬送され、手術が行われた。
容疑者は元コミュニティ会長の男とされる。記者男性に向けて銃を撃った後、女性2人にもナイフで斬撃を加え、バイクに乗って現場から逃走した。動機については警察が捜査中で、容疑者と被害記者らの間に過去のコミュニティ関連トラブル(土地・選挙・利権)があった可能性が指摘されている。
タイで地元記者が現場で殺害される事件は、深南部のテロ攻撃以外では非常に少ない。中央のメディアではなくローカルメディア・コミュニティペーパーの記者は、地域の利権や政治家の不正を取材する立場にあり、報復の対象になりやすい構造がある。チャイユットさんがどのような取材を進めていたのか、容疑者と直接の対立があったのかは今後の捜査で明らかになる見込みだ。
警察は防犯カメラ映像と目撃証言から容疑者の身元と逃走ルートを特定する作業を進めている。元コミュニティ会長という公的役職にあった人物の逮捕は地元社会への衝撃が大きく、選挙やコミュニティ運営の透明性をめぐる論議に発展する可能性もある。
タイのジャーナリスト保護は、タイ・ジャーナリスト協会(TJA)と国境なき記者団(RSF)の継続的な懸念事項だ。RSFの世界報道自由度指数2025年版でタイは180カ国中85位とASEAN内首位だが、2024年の87位からは2位上昇したばかりで、地方の記者が地域権力者から脅されたり攻撃されたりするケースは記録されている。今回の事件はタイのプレス自由度に対する新たな打撃となる。
警察は容疑者を「数日以内」に拘束する方針を表明している。負傷した女性2人はいずれも意識があり、容疑を裏付ける証言が得られる見込みだ。