スズキ・モーター・タイランドが23日、同社初のピュア電気自動車(BEV)「e VITARA(イー・ヴィターラ)」のタイ正式価格を289万バーツと発表した。インド・グジャラート州の工場で組み立てられた完成車(CBU)をそのまま輸入して販売する形となり、日本ブランドのBEVコンパクトSUVがタイの店頭に並ぶ形が初めて整う。
ボディは全長4,275mm、全幅1,800mm、全高1,635mm、ホイールベース2,700mm。地上高は180mmで、ラゲッジは306リットル。日本市場でも発売された「e Vitara」と同じHEARTECT-eプラットフォームを採用し、都市型SUVとしての取り回しを意識したサイズ感に仕上がっている。
グローバル仕様ではバッテリーに49kWhと61kWhの2パックが用意され、いずれもBYDと塔達(タタ)子会社で製造されるLFP(リン酸鉄リチウム)のブレードセル方式を使う。出力は49kWhが144馬力(72kW相当)、61kWhが174馬力前後、トルクは共通で189Nmとなる。タイ仕様の詳細グレード構成は追って発表される見通しだ。
289万バーツという価格設定は、タイのEV市場では明らかに高めのゾーンに入る。MGのZS EVやBYD Atto 3が110万〜150万バーツで戦い、政府のEV 3.5補助金を活用する中国系勢と比べると、インドCBUのスズキは現地生産優遇の対象から外れる分、価格で優位を取りにいく構図ではない。
同じ価格帯のタイの選択肢を見渡すと、Tesla Model Yのエントリーグレードがほぼ重なり、日系ライバルではホンダ CR-V e:HEVや、レクサスUX300hの上位グレードが視界に入る。スズキとしては「価格競争ではなく、ブランドの信頼感とグローバルで磨かれた走りの資質で選んでもらう」戦略を取る形だ。
スズキの強みは、軽自動車や小型車で培った軽量化・効率化の技術と、タイ・ラヨーンで長年培ってきた販売網・アフターサービスにある。e VITARAは輸入モデルとはいえ、全国のスズキ正規ディーラーで試乗・購入・整備が受けられ、保証と残価ローンも整備される。
タイ駐在の日本人にとっては、子育て世代が通勤・家族送迎・週末のレジャーをこなす「最初の日本ブランドEV」という位置づけになり得る。価格面では中国勢を検討する流れが今後強まる一方、日本での保証継続や帰国時の売却ルートまで見据えた選択肢としては、スズキとトヨタbZシリーズが並ぶ形だ。