タイ南部ナコンシータマラート県ムアン郡で22日午後9時頃、短時間利用型のホテル(タイでマーンルードと呼ばれる)で、プーケット県出身のキムヨンさん(仮名、31歳)がベッドで死亡しているのが見つかった。同室にいたはずの男性は「彼女が気絶した」とフロントに告げて立ち去り、バイクで逃走したとみられている。
出動したのはムアン・ナコンシータマラート警察署長キッティチャイ・クライナラ大佐、防犯部副署長ナラコーン・エーチュアイ警部、県警本部捜査部、鑑識、マハラート病院の当直医、プラチャー・ルアムチャイ財団の救助班。事件性を視野に入れた初期捜査が夜通し続けられている。
遺体の状況は痛ましい。青いロングジーンズとピンクのTシャツを着たままで、ブラジャーだけが脱がされてベッド上にまとめられていた。法医学的検視では、口腔粘膜に打撲による内出血、両腕に青あざと擦過傷が多数確認され、誰かと激しく争った痕跡が明らかに残っていた。
室内からは折りたたみ式のポケットナイフが1本、遺体のすぐ脇で発見された。被害者本人のものと思われるスマートフォンは浴室に落ちており、冷蔵庫の上には半分ほど飲まれたビールのグラスとペットボトルの水が残されていた。食事を頼んだ形跡はなく、短時間の利用中にトラブルが起きた構図が浮かぶ。
フロント係の証言によれば、男性は「連れの女性が倒れてしまった」と告げるなり支払いも済ませず駆け出し、待たせていたオートバイに飛び乗って姿を消した。ホテルの防犯カメラには男性とバイクの特徴がはっきり映っており、警察はその映像を基に近隣の通行ルートを絞り込んで追跡している。
タイでは「マーンルード」と呼ばれる短時間利用ホテルが地方都市の郊外に多数存在し、カップルや若者が時間単位で部屋を借りる文化が根付いている。一方で、近年はドラッグや性被害、金品トラブルといった犯罪の温床となるケースも目立ち、宿側はフロント付近に身分証確認を求める一方、客室内で起こる出来事には介入しにくい構造になっている。
今回の被害者がなぜ遠方のプーケットからナコンシータマラートの短時間ホテルに滞在していたのか、男性との関係は何か、事件か事故か、現時点では警察の取り調べと鑑識の分析を待つ段階だ。タイ在住日本人にとっては、こうしたローカル犯罪が「昼の街の裏側」で絶えず起きていることを再認識させる事件で、夜遅い時間の単独行動や知り合ったばかりの相手との密室移動には、国籍を問わずリスクが付きまとうことを思い出させる。