タイ警察は22日、プラチャチャート党所属のカモンサック・リーワモ下院議員(ナラティワット県第5区)を狙った銃撃事件の容疑者としてウィロチ氏をカンチャナブリ県サンクラブリー郡で身柄確保した。サンクラブリーはミャンマー国境に面した山岳地帯で、逃走先として潜伏していたところを複数部署合同の捜査チームに捕捉された。
逮捕を指揮したのは、ノパシルプ・プーンサワット警察庁次長と、バンコク首都圏警察本部捜査部長チョーティワット・ルアンウィライ大佐を含む混成部隊だ。ウィロチ容疑者はバンコクに移送され、これから詳しい取り調べに入る。
事件が起きたのは3月20日午前1時ごろ、ナラティワット県バチョー郡にあるカモンサック氏の自宅前だった。乗用ミニバンが到着した瞬間、ピックアップトラックから飛び出した武装グループがM-16自動小銃を撃ち込み、議員本人は軽傷で済んだものの、同乗していたアシスタントと運転手が重傷を負った。
カモンサック議員はムスリム法律家財団でタクバイ事件の遺族支援を担うなど、タイ南部の反政府武装闘争を巡る人権弁護活動で広く知られてきた人物だ。標的にされた背景には、国家安全保障機関との長年の緊張があるとみられてきた。
捜査は4月10日にヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が声明を発表したことで一気に国際注目を集めた。警察はこれまでに、車両の手配役、運転手、車両を隠した整備工場関係者、元海兵レンジャーの実行犯とされる4人の容疑者を押さえている。捜査本部は実行部隊を8人前後と見ており、犯行に使われた白いトヨタ・ピックアップがナラティワット県のISOC(内部安全保障作戦司令部)行政部所属だったことから、現役の国家機関要員の関与疑惑が焦点になっている。
アヌティン首相とISOC側の将軍は4月中旬、議員と国民に対する発言の一部を撤回して公に謝罪する場面もあった。今回のウィロチ容疑者の逮捕で、実行部隊の全容解明に向けた捜査はさらに一歩進む形となる。
タイ南部3県の治安はコロナ禍明けで小康状態にあったが、今年に入ってからは国会議員の自宅前という象徴的な場所を狙う事件が起き、南部進出の日系企業関係者の間でも警戒感が高まっている。現地に出張する日本人にとっても、国境地域・南部3県の政治動向と治安情報を同時に追う必要性が改めて明確になった局面だ。