タイ南部ナコンシータマラート県のソムチャイ・リラノーイ知事になりすました偽LINEアカウントが県内の高官に接触し、銀行口座情報を引き出そうとする詐欺が22日、明るみに出た。被害に遭いかけたのはスッティポット・チャヤナッタポン県医療衛生所長(サソチョー)。知事本人に電話で確認を取り、実害を免れた。
偽アカウントのプロフィール写真には、知事が公式行事で着用するダブルブレストの白い制服に、勲章を載せた正装姿が使われていた。第一印象で「本人」と誤認するよう狙った作りだ。
サソチョー所長のLINEに届いたメッセージは「ちょうど誰かに代理で用件を頼んでしまって、送金しないといけない。直接振り込めない状況だから、まずあなたの口座に送るので、あとで当人に転送してくれないか。それでいい?」という内容だった。
口座番号を差し出してしまえば、相手は送金を装って実際には送らず、逆に口座情報をもとにマネーロンダリングの「通し口座」として使う、あるいは他の被害者から振り込まれる送金の中継口座として悪用する、といった手口に展開できる。
所長は不自然なタイミングと内容に疑念を感じ、あえて知事本人に電話で確認。ソムチャイ知事は「そんな依頼はしていない」と即答し、なりすましと判明した。2人はナコンシータマラート・ムアン警察署に出向き、ムアン警察署長キッティチャイ・クライナラ大佐のもとで被害届を出した。
同じ日にはタイ東北部コラート(ナコンラチャシマ)でも、知事の姿を装ったLINEでほぼ100万バーツを騙し取ろうとした詐欺が発覚しており、別の公務員が気付いたことで被害は食い止められている。高官の名義とプロフィール写真を切り取って使うタイプの詐欺が、複数の県で同時多発的に展開している格好だ。
タイでは2025年以降、LINEアカウントのなりすましや、銀行・電力会社を騙る偽SMSを起点にした口座被害が急増してきた。タイ政府も通信キャリアに本人確認SIM登録を義務付けるなどの対策を進めているが、ソーシャルメディアを使った「肩書き詐欺」には法的な打ち手が追いついていない。
駐在員や長期滞在者の日本人にも、取引先の上司や知人を装ったLINE・メッセンジャー経由のなりすましは珍しい話ではなくなった。「LINEで口座番号を送ってほしい」「今は送金できないので肩代わりしてほしい」といった文面が届いた時は、相手の電話や別ルートで必ず本人確認を取るのが最も確実な防御となる。