タイ東北部ブリラム県フアイラート郡タサー地区のワット・バーンタソー(バーンタソー寺院)で21日夜、寺院主催の花火が破裂し、その破片が観客席に落下して74歳のソムポーン・スクサワットさんの頭を直撃する事故があった。ソムポーンさんは頭頂部を切り2針縫合する怪我を負ったが、本人はいたって落ち着いた様子で「誰も起こしたかった事故ではない」と語った。
現場は元住職プラクルー・スウィモンプンニャコン(ルアンポー・ブンルアン・シーラテーチョー)の荼毘に付す葬儀法要の会場だった。タイ東北部の寺院では大きな葬儀や祭りの前後に、空を彩るため寺院委員会が数十発の花火を打ち上げるのが慣例となっている。
ソムポーンさんは普段あまり出かけない人柄だが、その夜は大好きな「クルワイホーム」という劇団のリゲ(伝統歌舞劇)が境内で公演されることを聞き、高齢の友人たちを誘って座席のござを敷いて場所取りをしていたという。本人の話では、まだ公演が始まる前で、上空で花火が華やかに開く様子を見上げながら笑顔でつぶやき合っていた最中に事故が起きた。
破片が落下して悲鳴が上がり、顔や頭から血を流すソムポーンさんの周りに人だかりができた場面は、目撃者が撮影したクリップとしてタイのSNSで拡散された。救護スタッフが駆けつけて病院へ搬送し、医師は頭部の傷を2針縫合したうえで帰宅を許可した。
ソムポーンさんは退院後の取材に対し「怪我はしたけれど、誰もこんなことを起こしたかったわけではない。これは運命を振り払う出来事として受け止めている」と繰り返した。タイの仏教的な死生観に寄り添った言葉として、地元では「おばあちゃんの徳」に賛同する声が広がっている。
タイの寺院行事では大型の花火が市販の打ち上げ花火と同じ感覚で使われることがあり、風向きや保安距離の管理が十分でない会場もある。リゲや縁日に集まる高齢者や子どもにとって、花火を空に上げる慣習は楽しみでありながら、思わぬ方向に破片が飛び散る危うさを抱え続けている。