タイ東北部ブリラム県を流れるチー川(メーナムチー)のほとりで4月21日、27歳の男性がカエルを撃とうとして放った銛銃の矢が跳ね返り、自身の左目から脳にまで突き刺さる事故が起きた。全長60センチ超、定規2本分の鉄製の矢で、男性はブリラム中央病院に搬送されて重症と診断された。
事故当日、男性はオートバイに買ったばかりの銛銃と相棒の矢を積んで家を出た。義母のブッディさん(50)によると、男性は普段からチー川沿いで魚やカエルを撃つのを楽しみにしていた一人で、新しく届いた狩猟道具の性能を確かめに行ったところだったという。
1時間ほどして戻ってきた男性は、片手で左目を押さえながらオートバイに乗って家に駆け込んできた。目の中には矢がまっすぐ刺さったままで、家族が慌てて近所の住民を呼び、近隣のサトゥク病院に搬送した。だがサトゥク病院には手術に必要な設備がなく、より装備の整ったブリラム中央病院へ移された。
男性の説明によると、およそ10メートル先に大きなカエルの目が光るのを見つけ、持参した銛銃を構えて狙いを定めたという。引き金を引いたが矢はカエルに当たらず、なぜか自分の顔面に向かって戻ってきた。
銛銃にはそもそも、撃ち放った矢に細いロープが結び付けられていて、獲物に命中した後に引き戻せる仕組みになっている。ただ今回は、銃側の機構が不完全な作動を起こして矢を最後まで押し出せなかった可能性がある。ロープのテンションが一瞬で跳ね返り、射手の顔のほうへ矢を引き戻したのではないかと家族は見ている。
医師からは「危険な場所に達している」との説明があり、手術するかどうかも慎重に判断される段階だ。ブッディさんは「助かってほしいとただ祈るばかり」と涙ながらに語った。
タイの農村では、川や田んぼの周りで獲物を狙う自作・通信販売の銛銃や空気銃が、男性の趣味や日常の食材調達の道具として定着している。今回使われた銛銃は、ネット通販で数千バーツ台で手に入るタイプが多く、安全装置やロープの取り扱いに関する説明書が不十分なまま出回っているケースも指摘されている。
タイ在住の日本人にとっては縁遠い道具だが、ローカルの集落に溶け込んで暮らしていると、近所の青年が「魚を撃って来た」と矢を手に現れる光景は珍しくない。今回の事故は、旧式の狩猟道具が消えずに日常に残るタイの農村生活と、その陰でいつでも起きうる危うさを同時に見せる事例になった。