プーケット県警察は4月20日、ロシア国籍のアントン・クルチェンコ容疑者(41歳)をラワイ区のアパートで逮捕した。同容疑者はチャロン区ソイ・ターヤドのミニBig C前のATMで16回にわたって現金を引き出した形跡があり、合計331,000バーツを手にしていた。捜査当局は、コールセンター詐欺組織のマネーロンダリング実働役だったと見ている。
引き出された331,000バーツは、タイ国内で確認された16件のコールセンター詐欺の被害金と結びついている。被害総額は79万バーツを超えており、残りの差額は他のミュール(現金引き出し役)や送金ルート経由でさらに分散して動かされた可能性が高い。クルチェンコ容疑者は海外居住の詐欺グループの指示で、タイ国内のATMを回る「実働の手足」として機能していたと見られる。
警察がクルチェンコ容疑者を特定した経路は、ATM周辺の防犯カメラ解析と取引履歴の突合である。短期間に同じ人物が複数のカードで引き出しを繰り返すパターンは、ミュール行動の典型的な特徴であり、タイ警察はこの種の監視を近年強化している。Mini Big C前など郊外のATMが選ばれるのも、監視員の少なさを狙った定番の手口となっている。
身柄はカンチャナディット警察署に移送され、事情聴取が続いている。国際詐欺組織のネットワーク全体を解明するため、他の共犯者の特定と資金の流れの追跡が次の焦点となる。同じ組織が別のミュールを立てている可能性も高く、他県の同時摘発へ展開する見込みである。
タイでは近年、外国人の長期滞在者が詐欺組織のミュールとして雇われるケースが増えている。先に報じたパタヤの豪邸でインド人詐欺団30人が同国人向けに株・暗号通貨勧誘やバンコクのSIMボックス拠点摘発と並んで、今回はロシア人が現金引き出し役を担った形で、詐欺産業の多国籍化がはっきり見える。
在タイ日本人にとっては、自分の口座情報や本人確認書類が第三者に流出しないよう日常的に警戒する重要性が高まっている。コールセンター型の詐欺電話は発信源を偽装しながらタイ国内から掛けられるケースが多く、不審な番号からの「口座凍結」「配送不明」などの連絡には即座に反応せず、銀行・大使館の公式窓口で確認する習慣が身を守る第一歩となる。