タイ南部で生まれ、タイ北部で育った31歳の女性が、会ったこともない実父の兄弟を訪ねて1000km以上の旅をした。父は幼いころに他界し、母と別れて北部で育った女性にとって、叔父叔母は生涯会えない存在に思えていた。TikTokで語られた感動の再会ストーリーが、タイのSNSで数十万の共感を集めている。
TikTokアカウント「@thekaewkanda」を運営する女性が、4月19日に旅の記録を投稿した。「1000kmを走って、会ったことのない父の兄弟に会いに行った」という冒頭のメッセージから動画は始まる。
女性の生い立ちは複雑だった。生まれて8ヶ月で両親は離婚。4〜5歳の頃に実父は亡くなった。母親に連れられて北部に移り、継父を実父と思って育ってきた。自分の出生届に記された実父の名前を初めて見たのは、中学に入ってからだった。
経済的に厳しい家庭で育った女性は、大学に進学できない瀬戸際まで追い込まれていた。そこに突然、父方の叔父から連絡が入る。戸籍を手掛かりに女性の居場所を特定してくれたのだった。「会ったこともない叔父が、大学の学費を工面してくれた」と女性は語る。
今回の旅は、叔父に直接会うための1000km超の行程だった。タイ南部は彼女のルーツの地であり、父の兄弟が暮らす場所である。対面を経て、女性は「叔父はタイ南部で有名な人物だった」と知ることになる。父の存在が、これまでの31年で初めて実感を伴う形で戻ってきた瞬間である。
TikTokへの投稿は瞬く間にタイのSNS内で拡散した。共感のコメントが数千件単位で寄せられ、「血のつながりは時間と距離で切れない」「タイ人の家族観そのもの」との反響が目立つ。
タイでは家族の離散や再婚で子供が実父母と離れるケースが珍しくない一方で、血縁を大切にする文化が根強く残る。苗字と戸籍を手掛かりに数十年越しで再会を果たす事例はSNSの発達で可視化されるようになり、今回のケースもその象徴的な例である。
在タイ日本人にとっても、タイ人の家族観と戸籍制度の実態を垣間見る興味深い話題となる。遠く離れた親族を辿るストーリーは、タイ社会の温かさと戸籍管理の厳密さが両立していることを示す事例である。