タイ特別捜査局(DSI)と移民局が4月20日、スワンナプーム空港の入国ゲートで、中国人のMr. Eugene Yew(ユージン・ジュー)容疑者を逮捕した。被害者700人超、被害総額6億6000万バーツに及ぶ「幽霊ファンド投資詐欺」の実行役とされる人物で、タイ入国の瞬間を押さえられた形となった。
逮捕に動いたのはDSI捜査尾行・情報センターと入国管理局第2分局で、サムットプラカーン県バンプリー区スワンナプーム空港の到着ターミナルで身柄を確保した。逮捕の根拠となったのは2枚の刑事裁判所令状である。1枚は2013年8月30日付の令状1495/2556号で、証券取引法違反と一般国民からの詐欺的な金銭借用に関する緊急法違反、コンピュータ関連犯罪法違反を問う古い案件。もう1枚は2023年8月28日付の令状2736/2566号で、こちらも同系統の詐欺罪に絡む。
詐欺の枠組みは典型的な「ファンド投資勧誘」である。実際には存在しない架空のファンド(タイ語で「幽霊ファンド」)を用意し、高配当と元本保全をうたって被害者から資金を集めた後、配当は支払わずに消える。被害者は700人を超え、合計の被害額は6億6000万バーツ、日本円にして約30億円規模に達する。単発の集団詐欺としては近年でも相当大型の案件である。
この容疑者は10年以上前から逮捕状が出されており、長期にわたってタイ当局の指名手配リストに載っていた。2023年には新たな逮捕状が発行され、追及は強化されていた。今回はタイへの再入国を試みた瞬間に空港で捕まるという、移民局とDSIの情報連携が奏功した逮捕劇である。
タイの中国人投資家コミュニティでは、この種の「高配当ファンド詐欺」が繰り返し被害を生んできた。先に報じたパタヤの豪邸でインド人詐欺団30人が同国人向けに株・暗号通貨勧誘と同じく、外国人コミュニティ内部で同胞を騙す詐欺の構造的なパターンが続いている。加害者の国籍がタイではない場合、言語と信頼のハードルが低い同じ国の出身者を狙うのが定石である。
DSIは中国側と司法共助の枠組みで被害者情報を照合しつつ、残る共犯者の追跡を進めるとしている。6.6億バーツという規模からは、複数の資金ルートと共犯者の存在が想定される。タイ在住の日本人投資家も、国籍を問わず高配当をうたう私募ファンドへの投資には十分な警戒が求められる。