フードデリバリー配達員の仕事を隠れ蓑にした麻薬密売事件が摘発された。パトゥムターニー県ラムルカー郡の27歳男性の自宅からアイス26kgと違法なベレッタ9mm拳銃が押収された。タイ警察犯罪抑制部(Crime Suppression Division)の捜査員が踏み込み、300万バーツ(約1300万円)の報酬約束で麻薬配達を請け負っていた事実が判明した。
Khaosodによると、摘発は4月20日、タイ警察犯罪抑制部のパッタナサック・ブッパスワン警察少将(CSD長官)の指揮で行われた。ジェートニパット・シリワット警視総監第1部長とチャッチャイ・ヘームウィライ警部補が率いる捜査班が、パトゥムターニー県ラムルカー郡クーコット地区の住宅に踏み込んだ。
逮捕されたのは「ベンク」(仮名)、27歳の男性である。容疑は違法な銃器所持、麻薬取引、麻薬所持で、タイの麻薬法と銃器法の複数条項に違反している。同地域のクーコット・ラムルカーエリア、さらに隣接するタンヤブリー郡を含めて、以前から麻薬流通の中心人物として捜査対象となっていた。
押収された証拠は重い。26kgのアイス(覚醒剤の結晶状メタンフェタミン)は末端価格で数千万バーツに相当する規模で、ベレッタ9mm拳銃は韓国製・イタリア製を問わず違法な国内持ち込みが規制される対象である。いずれもタイ法で極めて重い刑が予定される。
ベンクの「配達員」という表の顔は、この事件の象徴的な要素だ。フードデリバリーやEC物流の配達員は日々数多くの住宅・店舗を訪れる立場で、小包を運ぶ理由の説明が立ちやすい。麻薬エージェントにとって「人目につかない配送手段」として配達員を利用する手法が以前から警戒されてきた。
取り調べで明らかになった詳細はなお衝撃的だ。ベンクは以前にアイスを最大490パッケージ一度に流した経験があると供述し、継続的な密売活動の規模の大きさが浮き彫りになった。今回の犯行での報酬は300万バーツを約束されていた。
タイの麻薬取引はゴールデントライアングル(タイ・ミャンマー・ラオス国境)で製造されたアイス・ヤーバが国内に流入する構造である。末端の配達員までの流通網を断つ取り締まりは、国家警察の最重要課題の一つだ。今回の逮捕で上位の流通経路に捜査が伸びる可能性がある。
在タイ日本人にとっても、配達員・運送員の中に犯罪関与者が紛れ込むリスクは認識しておきたい事例である。自分が受け取る小包・食事の配達員がまったくの無関係でも、ギグワーカー化した配送業界の構造的な脆弱性は、タイ社会の課題として浮上している。