タイ財務省のエカニット事務次官は4月20日、国民半額補助プログラム「コンラクルン・プラス2569」が4月21日の閣議に上程されないと明らかにした。5月開始で準備を進めていた日程は後ろ倒しとなり、本格実施は10月スタートで確定する方向となった。
コンラクルンはコロナ禍の2020年に始まった有名な政府補助金で、政府が買い物の半額(1人1日150バーツまで)を肩代わりするアプリ型のクーポン事業である。今回の2569年版は規模を拡大し、参加対象を最大5000万人、1人あたり最大2000バーツの支援枠が検討されていた。
財務省は当初、4月21日の閣議で正式承認を得たうえで5月から「Pao Tang」アプリを通じて配布を始める計画だった。クーポン利用は飲食店・市場・小規模商店などに限定され、デジタル決済を地方に浸透させる狙いも兼ねていた。半額負担による個人消費の押上げ効果は、2020〜22年の3ラウンドで合計7000億バーツ超の実需を呼び込んだ実績がある。
延期の理由について財務省は予算調整と制度設計の詰めを挙げている。5000万人規模に広げる場合、財源の手当てと対象者選定、加盟店の登録と不正防止の仕組みを同時に整える必要があり、4月中の閣議上程は物理的に間に合わなかった。ただしエカニット事務次官は、「10月実施は確実」と明言しており、年後半のタイ経済を下支えする柱として残る。
在住者の視点で言えば、コンラクルンは基本的にタイ国籍保有者を対象とする政策のため、日本人居住者が直接恩恵を受けるわけではない。ただし街場の食堂や市場、露店の価格感や混雑には強く影響する。5月から10月への延期は、物価高で苦しむタイ人消費者の家計にとって痛手であり、観光業にとっても周辺消費の落ち込み要因になり得る。
タイ財務省がエカニット次官を先頭に準備を急いでいる背景には、2027年度予算3.78兆バーツで公用車EV化を含む節約方針を打ち出した政府方針がある。支出削減を掲げつつ消費刺激策を続けるというバランスの中で、コンラクルン・プラスの設計は慎重にならざるを得ない事情がある。