タイ南部で感電し救出された子メガネザル「ソンクラン」が、8日間の闘病の末に死亡した。4月11日の発見時に顔と胴体に重度の火傷を負い、獣医チームが必死の治療を続けたが、腎不全という感電事故の合併症を克服できなかった。野生動物と人間の生活圏が重なる地域で頻発する感電事故の悲しい事例である。
亡くなったのは南部メガネザル(ドゥスキー・リーフ・モンキー)の1歳メス「ソンクラン」。ソンクラン休暇に重症状態で発見されたため、この名前が付けられた。Khaosodによると、4月11日に森林保護ホットライン1362が「カオ・タモンライ公園で感電したメガネザルがいる」との通報を受け、獣医チームが現地に急行した。
発見時の状態は深刻だった。顔と胴体に広範な火傷を負い、体毛は焦げ落ち、呼吸も浅かった。フアイサイ野生動物飼育ステーションに搬送され、獣医スクンポン・アヌラック氏(通称「ドクター・エス」)が24時間体制で密接な看護を続けた。
治療の途中で希望が見えた瞬間もあった。一時は瞬きや乳飲みが戻り、鳴き声を発するまでに回復した。SNSで経過を追っていた人々にも「助かるかもしれない」との期待が広がっていた。しかし4月19日夕方、容体が急変して息を引き取った。
獣医チームは死因を腎不全と発表した。30%を超える広範な火傷と感電で引き起こされる合併症で、小動物の感電事故では知られる致命的な合併症である。腎臓が衰え尿毒症に至るパターンで、皮膚の回復が見えても内臓が追いつかなかった。
南部メガネザル(Trachypithecus obscurus)はタイ南部からマレーシア半島にかけて生息する霊長類である。1992年タイ野生動物保護法の指定種でCITES付属書IIに掲載されている。森林伐採と人間生活圏の拡大で個体数が減少傾向にあり、電線への接触事故が死亡原因の上位に入る。
タイ南部・北部の森林と集落の境界域では、野生動物の電線感電事故が毎年発生している。象・サル・ゾウ鹿・大型の鳥類まで対象は広く、電力公社と森林保護局は「動物避け装置」の取り付けや電線被覆の強化を進めているが、予算と優先度の問題で普及は遅い。
在タイの日本人にとっても、野生動物の保護と共生は身近な課題である。山岳地帯や国立公園を訪れる際、怪我をした動物を見かけたらホットライン1362(森林保護)に通報すれば、今回のような救助チームが駆けつける仕組みが整っている。