タイの国営石油会社PTT(PTT Plc)が、米国とイランの戦争再燃に備えた石油価格安定化計画を公表した。通常は中東産原油に約70%依存しているが、紛争が拡大した場合は30%まで削減し、米国、南米、アフリカから60%以上を代替調達できる体制を整えたと明らかにした。
発表はホルムズ海峡でイランが艦艇から発砲した直後のタイミングである。米国による封鎖強化で国際石油市場が混乱するなか、PTTは「国内需要を満たすだけの備蓄がある」と宣言し、短期的な不安の払拭を図った。
具体的な代替ルートとして、サウジアラビアのヤンブ、アラブ首長国連邦のフジャイラ経由での原油受け取りが可能だとした。ホルムズ海峡が封鎖されても、紅海・アラビア海に面したこれらの港から船積みすれば、タンカー運航は継続できる。
備蓄面では、通常時の中東依存度70%に対し、紛争拡大時には30%まで比率を落とす計画である。その埋め合わせとして米国、南米、アフリカの産油国からの調達を60%以上に引き上げる。PTTは「1,600以上のグローバルパートナーを持つ」とし、調達網の広さを強調した。
タイではすでにスラタニ県の石油倉庫から6000万リットルが消失する事件が捜査されており、危機下での不正取引も浮上している。一方でPTT自身が2300億バーツを自己負担して小売価格を抑えてきたため、今回の代替調達計画は消費者価格の安定にも直結する。
中東情勢はイランの原油輸送への干渉と米国の制裁強化で揺れ動いており、タイのような純輸入国は調達先の多様化以外に選択肢が少ない。PTTが多角化を早期に整えていたことは、直接の消費者である国民にとって当面の安心材料となる。
ただし、米・南米・アフリカからの調達は輸送距離が長く、コストは上がる可能性が高い。価格安定化の旗印の背後で、どこまで追加コストを抱え込めるかが実質的な焦点になる。



