5歳の男の子・ナモくん(本名:ティーラポン・プームドーク、アユタヤ県バンパハン地区)が、おばあちゃんのパヨー・チャイディさん(58歳)が亜鉛板で脚を深く傷つけて大量出血したとき、一人で応急処置を施して病院に搬送するまでの手順を正確にこなした。その冷静さと判断力が病院関係者やSNSユーザーの間で称えられ、バンパハン病院から「ちびっこ応急処置士」の表彰状が贈られた。
事件当時、家の中にいたのはナモくんと祖母だけだった。パヨーさんが亜鉛板で左脚を切り、血が止まらなくなると、ナモくんはまず水で傷口を洗浄し、次に救急箱から綿花を取り出して圧迫止血を行った。さらに薄型の生理用ナプキンを傷口に当てて固定した後、近くの大人に助けを求めて祖母を病院に連れて行く手順を組み立てた。バンパハン病院の医師は「傷の処置は教科書どおりの正しい方法だった」と語っている。
ナモくんは現在幼稚園3年生で、まだ6歳になっていない。父親は早くに亡くなり、母親は出稼ぎで別の場所にいるため、普段は祖母と二人で生活している。誰かに応急処置を教わったわけではなく、テレビや身近な大人の行動を見て自然に覚えたという。地元の小学校の先生たちは「普段から好奇心旺盛で観察力が高い子」と話す。
生理用ナプキンの吸水性と圧迫固定の機能を止血に活用した点が特に注目を集めた。実際、海外の軍隊や救急医療の現場では、緊急時の代替品として生理用品が使われることがある。タイ赤十字社は今回の事例を受け、子どもへの応急処置教育の重要性を改めて強調した。
タイの幼少期教育カリキュラムでは応急処置の授業は必須ではなく、実態として家庭や地域社会での伝承に依存している部分が大きい。国内の溺水・交通事故・農作業事故などによる小児死亡率は東南アジア平均より高く、応急処置の普及が課題とされている。ナモくんの行動は「学校で教わらなくても身につけられる」という好事例として広く共有されている。
タイ保健省の統計では、農村部の家庭では2人以上の世代が同居し、子どもが高齢者の世話をするケースが都市部より多い。ナモくんのような状況は特別ではなく、日常的に起きうる場面だ。だからこそ、子どもへの基礎的な救急知識の普及が改めて議論されている。