アユタヤ県ウタイ郡で、警察が踏み込んだ「タマリンドの保管倉庫」から、覚せい剤(ヤーバー)950万錠が出てきた。末端の取引価格にして3億バーツ、日本円にしておよそ13億5,000万円相当(1バーツ=4.5円換算)。逮捕されたのは「バンク・ペッチャブーン」の通称で知られる男ナリン容疑者ら3人で、第1管区警察のワッタナー・イージン中将らが2026年4月16日に発表した。
倉庫の見た目はごく普通の農業倉庫だったという。容疑者らは「タマリンドを保管しておくために借りた」と説明していた。タイ南部・東北部の田舎で、酸味の効いた巨大な莢のあのタマリンドが、納屋にずらりと積み上がっている光景は、確かに地域の風景としてまったく不自然ではない。そこに目を向けた人は少なかったのだろう。
しかし扉を開けた警察が見たのは、整然と袋詰めされたヤーバーの山だった。摘発にはサラブリー県警とアユタヤ県警が合同で動き、アユタヤ県のデーチャートーン副知事や、ウタイ郡長のパポンサック氏も会見に同席している。地元行政まで揃った会見というところに、当局の本気度というか、見せたい意図のようなものも透けて見える。
気になるのは、950万錠という数字を末端まで運ぼうとすれば、相応の組織と資金が動いていたはずだ、という点だ。3億バーツ分の在庫を一時的にせよ抱えるネットワークが、地方の倉庫を借りる体で動いていた。逮捕された3人は実行役・中継役のラインで、上流の首謀者は別にいるとみるのが自然だろう。タイ警察も会見でその方向に捜査を伸ばすと示している。
「バンク・ペッチャブーン」というニックネームから察するに、ペッチャブーン県をベースにする人物が、わざわざアユタヤまで足を伸ばして倉庫を構えていたことになる。北からの陸路と、バンコクへの距離。地図を眺めると、なぜこの場所が選ばれたのかは、なんとなく見えてくる気がする。
タマリンドの倉庫、というカバーストーリーが妙にチャーミングなだけに、出てきた中身の落差が際立つ事件だった。