コンケーンのソンクラン名物「カオニアオ(もち米)通り」が2026年4月13日の初日に、例年にない閑散ぶりを見せた。夕方から数万人が詰めかける東北部最大のソンクラン会場が、今年は人影まばらなまま夜を迎えた。観光客が拍子抜けするほどの人の少なさが、ソンクランの変質を象徴するひとこまになった。
カオニアオ通りは正式にはシーチャン通り(ถนนศรีจันทร์)に位置し、コンケーン市中心部を東西に走る幹線道路の一角だ。ソンクラン期間中は「クルーンマヌット」(人の波)と呼ばれる人文字のウェーブが名物で、数万人が一斉に腕を上げて波を作る光景は全国ネットで中継されるほどの一大イベントだった。東北部のソンクランを代表する場として、毎年国内外から観光客が詰めかけていた。地元の飲食業者や土産物屋にとっても、ソンクラン期間の売り上げは年間最大の稼ぎ時だ。
ところが今年は状況が一変した。当初の段階で見物客の入りは明らかに少なかった。いつもならすし詰めになるはずの人波が、5分も続かないうちに自然消滅してしまったのだ。市内各地に設けられた複数の特設ステージに人が分散したことも原因の一つだが、会場全体のエネルギーは過去と比べて明らかに低調だった。
プラシット・ティオンランパニット知事と、プラシット・トーンテープタイ市長は開幕式に出席した。市長は壇上で「カオニアオ通りの人文字はもう二度ともとに戻らない」と宣言した。当局が今年の会場設計を大幅に変更し、従来の集中型ではなく分散型の配置を採用したことで、人文字を形成するための密集が生まれにくくなったのだ。この発言はSNSで広がり、「伝統を壊した」という批判の声も出た。
背景には複合的な要因がある。最大の要因とみられるのが燃料高だ。2026年3月から続くディーゼル価格の急騰でバンコクや各地からの長距離移動コストが大幅に増え、遠方からの来場者が激減した。コンケーン空港を使う国内線旅行者も、ソンクラン期間中の航空運賃が通常の5倍近い8,000バーツに高騰しており、旅行を断念したケースが相次いだ。コンケーンへ向かうはずだった予算旅行者が、今年は近場で祝うか、旅行自体を見送ったとみられる。
もう一つの要因は当局による規制強化だ。今年は飲酒の全面禁止と騒音規制が厳しく適用された。かつては大音量の音楽と共に一体感を演出していた会場が、いくぶん整然とした行事の雰囲気になり、「カオニアオ通りらしさ」が薄れたとの声が上がった。露店も例年より減り、ソンクランを楽しみながら地元グルメを味わうという体験が損なわれた。
カオニアオ通りのソンクラン来場者数は例年、期間中累計で数十万人に達していたとされる。2026年はそれが大幅に落ち込む見通しで、地元商店や屋台の売り上げへの影響は避けられない。コンケーンがソンクランの求心力を取り戻すためには、会場づくりの見直しと来場者の費用負担軽減策の両面が課題となる。
ソンクランのイベント運営費は地域の観光プロモーション予算の大部分を占める。コンケーン市は毎年数百万バーツを投じてカオニアオ通りの演出を手がけているが、来場者の激減で投資対効果が問われる状況になった。次回以降の開催方式について市は検討委員会を設置し、地元商店会や観光業者との協議を開始するとしている。
在タイ日本人や日本からの訪問者にとっても、今回のような出来事はタイの社会・文化の一側面を理解するうえで参考になる。タイと日本の間には歴史的・経済的な深い結びつきがあり、在タイ日系企業のビジネス活動や日本人観光客への影響も無視できない。今後も継続的な情報収集と現地状況の把握が重要だ。