4月1日に就任したエクナット・プロムパン新エネルギー大臣が、国家石油備蓄制度の創設と電気料金体系の抜本的な見直しを提唱した。中東紛争に端を発した燃料危機を「危機を機会に変える転換点」と位置づけ、エネルギー政策の構造改革に着手する。
国家石油備蓄制度の創設提案
エクナット大臣が最も重視するのは、タイに存在しない「国家石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve)」の創設だ。現在タイには民間企業が法律で義務付けられた最低備蓄量を持つ制度はあるが、政府が直接管理する戦略備蓄はない。今回のような国際的な供給ショックが起きた際に、政府が市場に放出できる「緩衝材」が不在だった。
大臣の構想では、政府が直接保有する石油備蓄を年間消費量の60〜90日分(日本は約200日分)を目安に整備する計画だ。ただし初期投資と保管インフラの整備には数千億バーツのコストがかかるとされ、実現には時間がかかる見通しだ。
電気料金の構造改革
大臣は電力料金(Ft)の決定プロセスの透明化と、再生可能エネルギーの「Direct PPA(電力購買契約)」の普及促進を打ち出した。Direct PPAは事業者が再エネ発電業者から直接電力を購入する仕組みで、日本でも2025年から制度整備が進んでいる。
現行の階段型電気料金(使用量が増えるほど高くなる)について、低所得世帯向けの優遇措置を維持しつつ、中間層以上には費用負担を求める構造への移行を検討している。
ソーラーパネルの普及支援
大臣は家庭・農業向けのソーラーパネル導入支援策も打ち出した。タイは年間日射量が多く、ソーラー発電の適地が広い。農家が自前の電力を賄えれば、電気代と燃料代の双方を削減できる。補助金と低利融資を組み合わせた支援の仕組みを設計中だという。
「危機を機会に」の文脈
エクナット大臣の施策は「燃料危機があったからこそ動ける改革」という文脈で語られている。平時には既得権を持つ業界の抵抗で進まない構造改革も、危機を背景に政治的な「窓」が開く、というロジックだ。日本でも2011年の震災後にエネルギー政策が転換したように、タイも2026年の燃料危機を転換点にしたい狙いがある。