タイ政府は2026年4月11日の閣議で、中東紛争を起因とする経済への影響を緩和するため、総額77億バーツ(約330億円)の経済救済パッケージを承認した。副首相兼財務大臣のエクニティ・ニティプラパーパ氏が主導し、一般市民・事業者・運輸業・農業の4分野に横断的な支援を行う。
支援策の内容
福祉カード(บัตรสวัสดิการแห่งรัฐ)保有者への月額補助は、従来の300バーツから400バーツに増額された。福祉カードは低所得者向けの電子マネーカードで、1,300万人以上が保有する。1人あたり月100バーツの増額は小幅だが、合計では毎月130億バーツ規模のベース支出となる。
運輸業者への支援としては、ディーゼル燃料費の直接補助が実施される。長距離バス、タクシー、配送会社などがコスト増加分の一部を政府が肩代わりする仕組みだ。農業者向けには、農業機械用燃料の補助単価の引き上げと、農業ローンの返済猶予延長が盛り込まれた。
スタグフレーションへの対応
エクニティ副首相は閣議後の会見で「タイ経済はスタグフレーション(景気停滞+物価上昇の同時発生)のリスクに直面している」と明言した。中東情勢の長期化で燃料・エネルギーコストが高止まりする一方、世界的な景気減速でタイの輸出需要も伸び悩んでいる。
スタグフレーションへの政策対応は難しい。通常のインフレには金融引き締め(利上げ)が有効だが、景気後退が同時に起きている場合は引き締めが不況を深刻化させる。タイ中央銀行は利上げには慎重で、財政政策が前面に立つ形となった。
財源
77億バーツの財源は、既存予算の組み替えと緊急の補正予算が組み合わされる。エネルギー省が管理する石油基金の残額、財務省の予備費、そして国会承認が必要な補正予算の3段階で手当てされる見通しだ。
日本との比較
日本でもコロナ禍以降、複数回にわたって総合経済対策が組まれてきた。規模感を比べると、77億バーツ(330億円)はGDPの約0.2%で、日本の2022年総合経済対策(72兆円規模)と比べると小規模だ。ただしタイの財政規模(年間予算約3兆バーツ程度)を考えると、緊急対策としては相応の規模といえる。