タイの保険業界が保険料の支払い方法を電子決済(e-Payment)へ全面的に移行する動きを加速させている。保険規制当局である保険事業委員会(คปภ.=OIC)が打ち出した新たな規制に対応するもので、長年問題視されてきた保険代理店による保険料の着服や不正行為の根絶を目指す。
従来、タイでは保険代理店が契約者から現金で保険料を受け取り、保険会社に納付する仕組みが広く残っていた。この過程で代理店が保険料を流用したり、契約者に偽の領収書を発行して保険料を横領するケースが後を絶たなかった。OICはこうした構造的な問題を根本から解決するため、保険料の支払いを電子決済に一本化する方針を示した。
生命保険・損害保険の各社はこの新基準を受け、QRコード決済やモバイルバンキングを通じた保険料収納システムの整備を急いでいる。契約者が保険会社の口座に直接支払う仕組みを構築することで、代理店が現金を介在させる余地をなくす狙いがある。
業界関係者によると、大手保険会社の多くはすでにシステム改修に着手しており、移行期間中は従来の現金払いと電子決済を併用する方針だという。一方で、地方部や高齢の契約者への対応が課題として残る。デジタル決済に不慣れな層への教育や、通信インフラが十分でない地域での代替手段の確保が求められている。
タイの保険市場は年々拡大を続けており、契約者保護の強化は業界全体の信頼性向上に不可欠である。今回のe-Payment義務化は、保険代理店の不正という長年の課題に制度面から切り込む画期的な措置といえる。