カンボジアのネット上で、タイを代表する料理トムヤムクンの起源はクメール人にあるとする主張が拡散している。「古代クメール人がシャムを統治していた数百年前に考案した料理だ」として、ユネスコ無形文化遺産としての認定をカンボジアにも与えるべきだと訴えている。
さらに、料理名を「タレー・プリアオ・ペッ」(酸っぱく辛い海の幸)や「クン・プリアオ」などクメール語に由来する名称へ変更するよう求める声も上がっている。タイの国民的スープであるトムヤムクンは、2024年にユネスコ無形文化遺産に登録されたばかりであり、その直後のタイミングでの主張となった。
タイのSNS上では即座に反論が相次いだ。「トムヤムクンに不可欠な唐辛子はアユタヤ時代にポルトガル商人がアメリカ大陸から持ち込んだもので、クメール統治時代には存在しなかった」と歴史的矛盾を指摘する声や、「クメールがシャムを支配していたという前提自体が誇張だ」との批判が殺到している。
こうした食文化の起源をめぐる論争は今回が初めてではない。カンボジアでは以前にも「ムー・グラティップ」(豚の鉄板焼き)をクメール語名に改める運動が展開され、一部で成果を上げたとされている。東南アジアでは料理の起源をめぐる隣国間の議論が繰り返されてきたが、今回のトムヤムクン論争はユネスコ登録という国際的な枠組みが絡むだけに、注目を集めている。
タイ政府からの公式な反応は現時点で確認されていないが、民間レベルでは「タイの文化遺産を守るべきだ」との声が広がっている。料理を通じた文化アイデンティティの主張は、両国関係の新たな火種となる可能性がある。