アヌティン首相は9日、国際詐欺組織に対する資産差し押さえの総額が200億バーツ(約800億円)に達したと発表した。詐欺撲滅を国家課題として位置づけ、捜査機関に取り締まりの一層の強化を指示している。
首相が打ち出した方針の柱は「名前を伏せ、行為で判断する」という原則である。容疑者の社会的地位や肩書にかかわらず、詐欺行為に関与した事実が確認されれば厳正に対処する姿勢を鮮明にした。これにより、政治家や有力者への捜査が及ぶことも辞さない構えを示した形である。
タイでは近年、国境を越えた大規模な詐欺ネットワークが深刻な社会問題となっている。マネロン対策局(AMLO)は直近で82億バーツ相当の資産を追加差し押さえしており、累計の差し押さえ額は204億バーツに拡大した。カンボジアやミャンマーとの国境地帯には拷問部屋を備えた詐欺拠点が摘発されるなど、組織の実態が次々と明らかになっている。
首相はさらに、差し押さえた資産を被害者への返還に充てる手続きを迅速化するよう関係省庁に求めた。詐欺被害は高齢者や低所得層に集中する傾向があり、被害金の早期返還は生活再建に直結する。政府は被害者救済の仕組みを整えることで、国民の信頼回復を図る考えである。
詐欺対策を国家課題に据えた背景には、被害規模の急拡大がある。投資詐欺やロマンス詐欺など手口は多様化し、SNSを通じた勧誘は国境を問わず広がっている。首相の強い姿勢が捜査の加速につながるか、今後の資産回収と被害者救済の進捗が注目される。
