タイのマネーロンダリング対策局(AMLO)取引委員会は2026年4月8日、大規模詐欺事件に関連する資産34件について新たに差し押さえを命じた。対象はヤイムリアク、ベンスミス、ウィリンヤー、ケートリヤーら関係者の保有資産で、車両、貸付金の債権、銀行預金、証券口座の残高および有価証券など多岐にわたる。追加分の総額は約82億6900万バーツに上り、今回の措置で累計差し押さえ額は102件・約203億9200万バーツに達した。
今回の差し押さえは90日間を上限とする暫定措置で、命令番号はY.96/2569として発出された。元となる事件は「テーンタイ」氏に関連する詐欺案件で、タイ国内外を巻き込む組織的な詐欺ネットワークとして当局が捜査を進めてきた。
ベンスミスとヤイムリアクの両名は国際詐欺ネットワークのキーパーソンとされており、被害者への虚偽の投資勧誘を通じて巨額の資金を収集したとされる。被害者はタイ国内にとどまらず、複数の国籍にわたっていると報告されている。AMOLの捜査では、詐取した資金の洗浄に不動産・車両・有価証券などが使われたとみている。
AMOLOは近年、詐欺・マネロン事件への対応を強化している。2024〜2025年には「コールセンター詐欺」対策として、不審な銀行口座の凍結件数が年間数万件規模に達した。今回のベンスミス事件のような組織的詐欺は、単なる個人の横領とは異なり、資産隠匿のための複雑な法人構造が使われることが多く、捜査・差し押さえに時間がかかる傾向がある。
タイの刑法では、マネーロンダリングの主犯格には最高10年の懲役と罰金が科される。今回差し押さえられた資産が最終的に国庫に没収されるか被害者への弁済に充当されるかは、今後の法廷審理で決まる。現時点では暫定的な措置であり、被告側が異議申し立てを行う可能性もある。
タイ国内では詐欺被害の総額が近年急増しており、王室警察の2025年年次報告では、サイバー詐欺・投資詐欺の被害額が前年比40%増加したとされる。AMOLOの資産差し押さえは被害者への一定の補償を期待させるが、複雑な資産構造のもとでは実際に回収できる額に限界があることも指摘されている。