タイで毎年4月に行われる徴兵くじ引き(จับใบดำใบแดง)が2026年4月4日、ウタイターニー県タップターン郡の公民館で実施された。すでに志願制度を経て119人が選抜されていたが、あと33人の兵士が必要とされ、対象者たちは赤札(徴兵)か黒札(免除)かを決める運命のくじ引きに臨んだ。会場では2人の僧侶が壇上に立たされ、うち1人が赤札を引いて顔面蒼白となる場面や、応援団3人が猛暑で失神して救急搬送される波乱が連続した。
ウタイターニー県タップターン郡の現場で何が起きたか
ウタイターニー県はタイ中央部、バンコクから北へ約230kmの稲作地帯。この日、会場の公民館は対象者の家族や友人で埋め尽くされ、最初の1人目がいきなり赤札を引くと、悲鳴と歓声が入り混じった叫びが響き渡った。猛暑と人混みの中で応援に駆けつけた家族3人が相次いで失神し、救急隊が病院に搬送する騒ぎとなった。
注目を集めたのは、くじ引きに参加した2人の僧侶である。タイでは僧侶であっても、仏教教育で一定のパーリ語学位(ナクタム3級または6級以上)を持たなければ徴兵免除にはならない。最初の僧侶が黒札を引くと「出家を続けられるぞ!」と周囲から歓声が上がった。しかし2人目の僧侶が赤札を引くと、本人は顔面蒼白に。袈裟を脱いで軍服に着替える日が確定した瞬間であった。
最もドラマチックだったのは最後の5人である。残る赤札はわずか1枚。それまで騒然としていた会場が一転して静まり返り、緊張感に包まれた。最初の1人が箱に手を入れ、引き出したのは赤札だった。残る4人は安堵で涙を流し、会場は大きなため息に包まれた。
タイ徴兵くじとは?赤札・黒札の意味
タイの徴兵検査(เกณฑ์ทหาร)は、満21歳のタイ人男性全員に通知が届き、毎年4月1日から12日のあいだに地元の検査会場で実施される。志願者として事前申し込みをした若者はこの場でそのまま入隊が決まるが、定員に満たない場合は残った対象者全員でくじを引く。「ใบแดง(赤札)」を引いた者は徴兵、「ใบดำ(黒札)」を引いた者は兵役免除。1枚で人生の2年が決まる仕組みのため、家族・友人・恋人が大挙して応援に押しかけ、毎年4月のタイ各地で名物光景となる。
2026年の全国対象者は約47万7,000人。軍が必要とする約8万4,000人のうち、約2万2,000人がオンラインで事前に志願しており、残りの約6万2,000人が各地区のくじ引きで選ばれる。
僧侶も徴兵対象になる理由
出家していれば徴兵免除になるという誤解があるが、タイの兵役法では「ナクタム3級以上の仏教学位を取得した僧侶」だけが免除対象となる。つまり、出家して間もない、あるいは仏教学位を取得していない若い僧侶は、袈裟を着ていても徴兵対象のままだ。今回のように赤札を引いた僧侶は、原則として一度還俗(げんぞく)し、軍隊で2年勤めたあと改めて出家するパターンが多い。
関連の徴兵2026トピック
同じ4月の徴兵検査では、地区によって対極的な光景も報じられている。先日はノンタブリー県サイノイ郡で志願率が100%に達し、名物のくじ引き自体が不要になるケースもあった。一方、アーントーン県では黒札を引いた若者が寺で全裸ダッシュ・鍋を叩いて願掛け解きを行うバイラル映像が話題化している。地区ごとの空気感がこれほど違う制度も珍しい。
関連背景
日本に徴兵制度がない世代の在タイ日本人にとっては、毎年4月の徴兵くじはタイの社会と仏教文化を間近に見る貴重な機会となる。タイ人の同僚や友人の息子が4月に「くじを引きに行く」と言ったときの緊張感、そして当日のドラマチックな赤札・黒札のやり取りは、海外駐在の生活実感の一場面だ。タップターン郡のような地方都市では、この日が町の年中行事に近い空気をまとっている。
関連: 徴兵制度全体の解説
タイ徴兵制度の全体像(赤札・黒札の確率、志願制度、免除条件、地区別の違い)についてはタイ徴兵くじとは?赤札・黒札の意味、僧侶免除、志願制を2026年最新事例で解説で包括的にまとめている。


