タイ政府が2026年3月27日、結核への警告を発した。特に乳幼児の感染リスクが高く、多剤耐性結核の重症例が5件確認されたと発表した。2週間以上続く咳があれば1か月以内に受診するよう呼びかけている。
WHOの最新データと国内状況
政府広報担当のアイリン・パンタリット次官が発表した内容によれば、世界保健機関(WHO)の最新報告で結核は今なお世界で最も多くの命を奪う感染症の一つだ。世界全体で年間約1,070万人が新規感染し、123万人が死亡している。
タイ国内では2025年に新規感染者が約10万4,000人、死亡者が11,300人超と予測された。この規模はASEAN地域でも上位に位置する深刻な状況だ。特に今回の発表で強調されたのは、乳幼児や免疫力が低下した層での感染リスクと、多剤耐性結核(MDR-TB)症例の存在だ。
多剤耐性結核とは
通常の結核は、イソニアジドやリファンピシンなど複数の抗生物質を組み合わせた標準治療薬で治癒できる。しかし多剤耐性結核は、これらの主要薬に対して耐性を持つ結核菌によって引き起こされ、治療期間が大幅に長くなる。標準治療が6か月程度なのに対し、MDR-TBの治療は18〜24か月にわたることもある。
今回タイで確認された重症の多剤耐性結核5件は、治療が特に困難なケースとして政府が警戒を呼びかけた。MDR-TBは感染が広がると対処が極めて難しくなるため、早期発見が一層重要になる。
感染経路と予防
結核は空気感染する。活動性結核の患者が咳やくしゃみをすると菌が空気中に飛散し、それを吸い込んだ人が感染する可能性がある。密閉された空間での長時間接触が主なリスク要因だ。
症状の目安は2週間以上続く咳、微熱、倦怠感、体重減少、夜間の発汗など。こうした症状が続く場合、政府は「1か月以内の受診」を強く勧めている。タイ国内では全国の保健センターや病院で無料検査が受けられる。
BCGワクチンは重症結核(結核性髄膜炎など)を予防する効果があり、タイでは出生時に接種される。ただし成人の肺結核に対する予防効果は限定的で、環境・栄養状態の改善と早期治療が鍵を握る。
日本との比較
日本の結核罹患率(人口10万人当たりの患者数)は近年8前後で低下傾向にある。一方タイは同150〜180前後と推定され、日本より大幅に高い。タイに長期滞在する場合、混雑した環境での感染リスクは無視できない。海外渡航前のBCGや健康診断の確認、帰国後の症状チェックが推奨される。
WHO南東アジア地域事務局はタイを「高結核負担国」に分類しており、撲滅には官民一体の取り組みと医療インフラの整備が不可欠だとしている。