タイ疾病管理局(DDC、กรมควบคุมโรค)が5月19日、4月26日から5月9日までの観察期間にClade Ib型の猿痘(Mpox)新規2例を確認したと発表した。新規感染者は25歳から40歳のタイ人男性2人で、1人は知らない人との性的接触、もう1人は混雑したフェスティバル会場での長時間の密接接触が感染経路だった。タイ国内の猿痘感染累計は1,074例、死亡16人(2024年以降の累計)に達しており、特に高致死率のClade Ib型の散発的検出が継続している。疾病管理局はMSM(男性同性間性交渉者)グループとフェスティバル参加者への注意喚起を続けている。
新規2例の感染経路
新規確認されたClade Ib型2例の感染経路は次のように整理されている。
- 25歳から40歳のタイ人男性2人
- 1例: 知らない人との性的接触
- 1例: 混雑したフェスティバル会場での長時間の密接接触
監視対象は週18-19(4月26日から5月9日)で、症状確認・PCR検査・接触者追跡の標準プロセスを経て確定診断に至った。
疾病管理局のドクター・モンティアン氏は会見で「リスク行動を取るグループから感染が継続して検出されている」とコメントし、警戒継続の必要性を強調した。
Clade Ib型と Clade IIb型の違い
世界保健機関(WHO)が2024年8月にPHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)を再宣言した猿痘ウイルスには、複数の系統が存在する。
- Clade I型: 主にコンゴ民主共和国・中央アフリカで流行、致死率約3-10%
- Clade Ia型: 旧来のClade I型、コンゴ盆地で長年定着
- Clade Ib型: 2024年以降に急速拡大した新変異株、性接触で広がる傾向
- Clade IIb型: 2022年から世界各地で流行、致死率約0.1%
タイで継続的に検出されているのは主にClade IIb型だったが、2024年からClade Ib型の流入が始まり、2026年5月時点で監視レベルが引き上げられている状況。
タイの累計感染状況
タイ疾病管理局の集計では、2024年以降のタイ国内猿痘感染は次の累計に達している。
- 確定感染累計: 1,074例
- 死亡累計: 16人
- 主な感染者層: 18-39歳の男性が中心
- 監視対象の新規例: 月数件のペースで継続検出
タイのMpox(猿痘)感染は他のアジア諸国と比較しても多い水準で、観光地での外国人感染も少なくない。直近では、外国人観光客がタイ滞在中に性的接触で感染したケースも報告されている。
MSMグループへの警告
タイ疾病管理局はMSM(男性同性間性交渉者)グループに対して、以下の予防策を呼びかけている。
- 知らない人との性的接触を避ける
- 症状のある人との皮膚接触を避ける
- 発疹・水ぶくれが出た場合は医療機関に直接相談
- 接触歴がある場合は監視期間21日間の自主観察
- フェスティバル・パーティー会場での長時間密接接触に注意
これらはClade Ib型の感染経路が「密接接触+性接触」中心であることに基づく対策で、一般人口への大規模拡大リスクは低い水準にとどまるとされる。
外国人観光客の感染リスク
タイは観光大国としてClade Ib型の流入リスクを継続的に抱えている。バンコク・パタヤ・プーケットなどの観光地で、外国人観光客同士または現地パートナーとの性的接触での感染事例が報告されている。
タイ外務省・観光局は外国人向けに次の情報提供を進めている。
- 国境通過時の検疫対応(発症から3週間以内の渡航は申告)
- 観光地での予防情報の多言語提供
- 観光客向けクリニックでのワクチン接種(費用は自己負担)
ただし、入国時の検疫はあくまで「申告ベース」で、症状がない感染者の発見は困難。観光客側の自衛意識が最大の防御策となる。
関連の続報
タイ国内の猿痘・Clade Ib関連の前回報道として、本サイトでは次の記事を公開している。
直近のClade Ib検出事例は、ソンクラン(タイ正月、4月13-15日)前後の人出増加に伴って新規例が増加するパターンが定着しつつある。フェスティバル・観光イベントが人流の集中点になることが、感染拡大の要因として指摘されている。
予防の基本
タイ疾病管理局が推奨する基本的な予防策は次の通り。
- 発疹・水ぶくれ・発熱症状のある人との皮膚接触を避ける
- 性的接触の相手を限定し、症状の有無を確認
- フェスティバル・パーティーでの長時間密接接触に注意
- 体調不良時は早めに医療機関に相談
- リスク行動後21日間は自主的に症状監視
タイ国内のMpoxワクチンはまだ広範な接種体制が整っておらず、リスクグループへの優先接種が中心。一般人口の予防は「接触機会の管理」が現実的な選択肢となる。
観察期間と次回報告
タイ疾病管理局は週次でMpox感染状況を更新しており、次回報告は来週(週20)に予定されている。Clade Ib型の散発的検出が続く場合、追加の警戒措置や接触者追跡の強化が検討される見込み。