外国人投資家がタイ株式市場からの資金引き揚げを加速させた。NVDR(無議決権預託証券)経由の1日の売買総額が4万億バーツを超え、市場全体の31%に達するなか、テクノロジー関連株を中心に大規模な売り越しが続いている。1日の売り越し額トップはデルタ電子(タイランド)の約11億バーツで、計5銘柄で400億バーツ規模の売り越しとなった。
NVDRはタイ証券取引所が外国人向けに設けた仕組みで、外国人持株比率が上限に達した銘柄でも実質的に参加できる。議決権はないが配当と値上がり益は得られる。外国人投資家がタイ市場に参加する主要な手段の一つだ。
売り越しの主因は2つある。一つはデルタ電子(DELTA)をはじめとするタイのテクノロジー株の高PER(株価収益率)への警戒だ。DELTAは2020年代前半に電気自動車(EV)部品サプライヤーとして急騰し、株価は数年で数十倍になった。しかし足元では成長期待の剥落と高金利環境が重なり、割高感が強まっていた。もう一つは中東情勢の緊迫化を受けた原油高騰で、タイのマクロ経済見通しへの懸念が高まったことだ。
タイ証券取引所(SET)の指数は2026年3月に年初来で3〜5%程度下落しており、外国人売りが相場全体の重しとなっていた。タイ国内機関投資家や個人投資家が買い支える場面も見られたが、外国人の売りの規模には及ばなかった。
タイ中央銀行(BOT)の統計では、外国人のタイ株式保有比率は2025年末時点で約26%。コロナ前の30%台から低下傾向にある。近年はベトナムやインドネシアのような高成長新興市場への資金シフトも続いており、タイ市場の相対的な魅力が問われている。
タイ証券取引委員会(SEC)は外国資本の動向を注視しながら、市場安定化に向けた情報発信を続けている。長期的には電動化関連やデジタルインフラへの外国人投資を呼び込む政策が優先課題となっている。