タイ政府が検討していたディーゼル燃料の物品税1バーツ引き下げについて、選挙管理委員会(EC)のサワン事務局長が3月27日、「内閣からの正式な要請書はまだ届いていない」と明らかにした。政府の発表と実務手続きの間に齟齬が生じており、減税の実施は遅れている格好だ。
減税案の背景
ディーゼル物品税の1バーツ引き下げは、副首相兼運輸大臣のピパット・ラータナープアック氏が中東危機対策の一環として打ち出した方針だ。ピパット氏は燃料高騰を受けて設置された経済対策本部のディレクターとして、国民の負担軽減策を模索してきた。
タイ政府は2026年3月以降、中東情勢の悪化に伴うディーゼル価格高騰に頭を悩ませてきた。石油輸出国機構(OPEC)加盟国との供給網に不安が生じたことで、国際市場の原油価格が急騰。タイでは3月末にディーゼルが33バーツに達し、さらなる値上がりの懸念があった。
選管の役割とは
タイでは選挙期間中、内閣の決定が有権者への利益供与と見なされないよう、一定の財政施策について選管(ECタイ)の承認が義務付けられている。選管は独立した政府機関として、政府の施策が選挙への不当な影響を及ぼさないか審査する。
今回の減税は国民に対する直接的な経済的恩恵となるため、選管プロセスを経る必要がある。しかしサワン事務局長によると、3月27日時点でまだ内閣から正式な書類が届いていなかった。
手続きの遅れが政府に批判
選管の別の担当者は「書類が届き次第、緊急会議を開いて即座に対応する準備はできている」と述べており、選管側に問題があるわけではないことが明らかになった。問題は政府の内部手続きにあった。
政府の内部調整が遅れた理由として、関係省庁間の合意形成に時間がかかったこと、法的根拠の整理が必要だったことなどが挙げられている。国民が燃料高に苦しむなかで、政府の対応が後手に回ったとの批判も出た。
ディーゼルへの依存度
タイはアジアでもディーゼル依存度が高い国の一つだ。農業用トラクター・漁船・長距離トラック・軍バスなど、経済の基盤となる輸送・生産手段の多くがディーゼルを使用する。物品税1バーツの引き下げは単純計算で、1リットルあたりの価格を1バーツ引き下げる効果がある。
タイの1日あたりのディーゼル消費量は約6,000万リットルとされており、1バーツの減税は1日あたり約6,000万バーツ(約27億円)の負担軽減効果がある計算だ。