タイ消費者保護委員会は3月26日、燃料価格の急騰を受けて一部の病院が患者への薬の処方量を削減している可能性があると懸念を表明した。タイ薬学会会長のパーヌチョート・トーンヤン氏が声明を発表し、「政府は医療機関と患者の双方に対して明確な情報を提供し、脆弱な患者層を優先する対策を取るべきだ」と訴えた。
燃料危機は物流コスト全体を押し上げており、医薬品の輸送・保管コストも例外ではない。特に地方の公立病院は予算が限られており、仕入れコストが上がれば処方量を削減せざるを得ない状況に追い込まれる可能性がある。2週間分を1週間分にする、30日分を14日分にするといった処方量の圧縮が一部で起きているという報告がある。
問題は、処方量が減ることで患者が通院頻度を増やさなければならなくなる点だ。燃料高で交通費も上がっている中、特に地方の慢性疾患患者(糖尿病、高血圧、心疾患など)にとっては、薬を取りに行く往復のコストが新たな負担となる。高齢者や経済的に余裕のない患者層への二重の打撃が懸念されている。
タイの公立病院の医薬品供給はMOPH(保健省)が管理する国家調達システムを通じて行われているが、各病院の裁量で処方量を調整する余地もある。消費者保護委員会は政府に対し、「燃料費補助や診療費軽減措置と並行して、医薬品供給の安定確保を緊急課題として位置づけるべきだ」と訴えた。
タイの全国民健康保険(UCS)は公立病院での受診と薬の処方を基本的に無償または低額で受けられる制度だが、薬の種類によっては適用外のものもある。燃料危機がこの制度の実施に直接的な影響を与えるとすれば、最も負担が集中するのは最低所得層の患者だ。タイの医療制度の脆弱な部分が、燃料という別の次元の危機によって露呈している。