タイのシハサック・プアンゲットケーオ外務大臣は2026年3月24日、検討されているビザなし滞在期間の60日から30日への短縮が観光業に影響しないとの見解を示した。外務省の2026年年次外交官セミナー前日に発言したもので、変更の目的はビザなし滞在の悪用防止にあるとした。
現行のタイのビザなし入国制度では、多くの国の国籍保持者が最長60日間滞在できる。これはコロナ禍後の観光客誘致策として2022〜2023年頃に延長されたものだ。しかし60日という長期滞在が、労働目的での滞在や永住を目的とした「観光ビザ活用」の温床になっているとの指摘が内務省・移民局から上がっていた。
30日への短縮が実施された場合、最も影響を受けるのは長期滞在を好む欧米・オーストラリア系の退職者層と、ノマドワーカーと呼ばれる遠隔就労者層だ。後者はパンデミック後にタイの物価の安さと生活環境を気に入り、観光ビザを繰り返し更新しながら数カ月単位で滞在するケースが増えていた。タイ政府は2023年にロングタームビザ(LTR)制度を整備したが、申請条件のハードルが高く利用は限定的にとどまっている。
一方、外務大臣の「観光業に影響しない」という発言の根拠は、実際の観光統計にある。タイ観光スポーツ省の2025年データによると、タイへの外国人観光客の平均滞在日数は9〜11日程度で、60日の上限を使い切る観光客は全体の1%以下だ。つまり大多数の短期観光客には変更の影響は及ばない。
タイの観光業はGDPの約12%を占める重要産業であり、2025年には外国人観光客3400万人超を受け入れた。政府はビザ政策の引き締めと観光業の健全な発展の両立を目指しているが、実際の短縮実施時期・詳細条件については2026年3月時点でまだ確定していない。